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「俺の話の腰を折るな!続けるぞ。」
コーヒーが全員の前に並んだ。役目を果たしている時はニコニコしていた秋元さんが、仕事がなくなると前と同様、一人落ち着かなげ。しょうがないけれど。
「それで、さっきの男の話だ。そいつはゲイだと睨んで水をむけたら案の定だ。
借金にまみれた切っ掛けが里村の記事だよ。」
「あの、すいません。」
秋元さんが恐る恐るといった風に手をあげた。
「強請って罪になりますよね。」
「恐喝罪、刑法249条。くらうとしたら10年以下。」
全員が裕を見る。
「なのなあ、ヤクザが生きていくためには法律をちゃんと把握しておかないと抜け穴を見つけられないだろうが。拳銃ぶっぱなしたり、日本刀片手に事務所に乗り込んだり、今時流行らねえってことだよ。
なかなか先にすすまねえな・・・まったく。」
イライラと吸殻を灰皿の上でねじ切ると、また火をつけて煙を吸い込む。
「警察にいって、相手が逮捕されて、はい終わり、とはいかない。告発した側も事情を聞かれるし、裁判もある。当然借金までして守ろうとした秘密は露見する。
だから黙って払い続けるわけだ。
ちなみに、その男の秘密。現在46歳、未婚。養子がいる。
大学生の時に知り合った親友の嫁を密かに想っていた。残念なことに彼女は出産の時に命を落とす。それからずっと親友に寄り添い、子供のよき理解者として傍にいた。
彼女を忘れられないから結婚はしなかった。
しかし不幸なことに、今度は親友が交通事故で亡くなってしまう。子供が15歳の時にな。
当たり前のように子供を引き取った。
その子供を17歳の時に養子にした。それなりの社会的地位があったし、将来その子が困らないようにしたかったからだ。子供がいない自分の財産を残してやりたかった。
そいつは今46歳。子供は20歳だ。
いい話だろ?」
額面どおり・・・なら。
裕はわたしの顔をみて、フンと鼻をならした。予想どおり・・・。
「実際は違う。その男が惚れていたのは嫁じゃなくて親友の方だ。
親友に瓜二つの息子。17歳の時に養子にしたが、それは養子縁組という名の結婚だ。
41歳と15歳、その2年後に結婚。歳の差26歳、男同士。」
ふぅ~~。煙を吐き出す音。
「秋元さん、これ抱えて警察に駆け込めるか?」
「・・・・いやはや・・・なんとも。」
「人の恋愛道にどうのこうの言えるほど、俺は偉くない。俺にとって重要なのは貸した金の回収。
恐喝のネタがネタだけに、このまま続けば借金は減らないだろう。
だから、その編集長さんとやらに支払をしてもらうことにした。
当然有り金だけじゃ足りないだろうから、使える物は使って責任を果たしてもらう。」
秋元さんがさっきより、少しだけ力をこめて手を挙げた。
「あの・・・ちなみにその編集長って、どこの会社の?」
裕は秋山さんに目をやると、順にわたし達を見まわした。
「それは言えない。言ってもいいが知らない方がいい。たとえクズの人間だったとしてもだ。
そうだな、例えば、内臓を抜かれたバラバラ死体が発見されて、その人間が編集長だったとする。
どんなクズだったとしても、自分は何かできたかもしれない、命を救えたかもしれない。
普通の人間はそう考えてしまうものだ。自分を責める。
編集長という身分も実は違うかもしれない。ヤクザを信用するな、これは覚えておいたほうがいい。」
「桜沢さん、ご尽力・・・ありがとうございます。」
「波多家さん、礼には及ばない。こっちは金の回収の目途がついたし、結果オーライだ。」
「じゃあ、里村の対応に関しては俺から。」
宏之が手をあげる。
以前の宏之が露見する・・・。
宏之はわたしの手をキュとにぎって、話を始めた。
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