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-76- 桜沢の独り言
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組の中での自分の立場が変化しつつある。
若頭が持っていた『sin』は初期の形態そのままで運営されていた。それなりの金を生み出すが、欲が渦巻く場所はアングラのままで入会金と会費以外は収益がなかった。
それを斉宮が取り上げたのだ-芳樹は金さえあれば文句は言わない、そう言って。
現に当時の上りと同額を受け取れれば文句はいっさいなかった。
実務ゼロで入ってくる金、一度楽をしてしまえば、楽なほうに転がる性格に加え、面倒臭がりでもある。
現在どのくらいの利益を生み出しているのかを調べることもしない。
そしてもう少しよこせと言えば、働けといわれるだけなので、それもしない。
ないない尽くしだ。10代の頃から傍にいるが意欲もなく、自分の立場に甘え、遊び好き。
悪い人間ではない。ただ、ヤクザにほとほと向いていない息子。
『sin』は高級クラブに生まれ変わり、少しのスリルと欲望を吐き出せる場所になった。
もともとの会員は裏口から地下にもぐり、教授の繰り広げる快感開発の授業を受講し爛れていく。
それに仕込みが役割に加わった。借金の形として連れてこられた人間が次の「働き」をもとめられる場所に応じた準備。
借りた物は返すのが当たり前、保証人になるのも本人が悪い。「代償」は必ず求められる。
ただしSEXを代価にする嫌悪感がぬぐえない。沢木の身に降りかかったことが大きいからだろう。
何もしらず、救い出せなかった事を未だに悔いている。
17歳の若い男が、仕込みのリストに入っていたのを見たとき、斉宮(当時はマルだった)に直談判しに行った。
「へえ、吉川の件ですっかりおとなしくなったとガッカリしていたところです。」
「さんざん食い物にしてきた奴らが不問。そのツケをどうしてコイツが?」
「ま、いいでしょう。仕込みに突っ込む人選は桜沢がしなさい。」
仕込みの人選に会員の選抜が加わり、アガリの管理を任されて・・・そうしているうちに、あのビル全体の運営管理を任されるようになってしまった。
確実にでかいアガリを上げ続ける物件。
そこに誘い込む人間にも幅を持たせた。欲望が介在すると人間は恐ろしく無防備で貪欲になる。
社会的地位が高いほど、振れ幅が大きくなる-「太い客」
法治を司る警察のキャリアであっても、しょせんは男だ。
秘密で守られているという幻想にすがって、彼らは3Fに足を運ぶ。
「秘密」を洩らさないことで「恩」を売る。
現金以外の「秘密」という財産が積み重なっていく。
欲は道を踏み外す。
それを知っているから、俺は関が好きなのかもしれない。
関が翳る時、それは欲だけになった人間がどれだけ浅ましいかを認識したときに見せるものだ。
ジジイのいう事もわかるが、身の振り方を考えるのは今じゃない。
その時が来たら・・・たぶんわかるはずだ。
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