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「山室の代理でお届け物をお持ちしました。」
「さようでございますか。」
名刺ケースから一枚引きだし、選挙事務所の受付らしき業務をしている女性に渡した。
『衆議院議員 山室 修 秘書 山田 司 』
名刺は本物。ただし山田は男だが、今のわたしは女性の扮装だ。
ストレートロングのウィッグ、黒縁の眼鏡に濃紺のパンツスーツ。ハイネックのインナーは光沢のあるグレー、肩かけの厳ついバッグ。
「アポが11:00のはずです。少し早目でしたか?」
「いいえ、お待ちしておりました。こちらへ。」
促され奥のドアに進む。
【 コンコン 】
「山室先生の秘書の方がお見えです。」
「お通しして。」
室内に入ると背後でドアが閉められた。デスクのイスから立ち上がり出迎えた男-水原
「お忙しいのに、御足労ありがとうございます。」
「いいえ、こちらこそ。山室が急に外せないアポが入ってしまいまして。」
促されるまま、応接セットのソファに腰をかける。
変わらない容貌。自分の容姿が人より秀でていることを認識している男・・本人が思うほどに抜きんでているわけではないが、選挙において中高年の主婦を囲い込むには充分。
【 コンコン 】
「失礼します。」
先ほどの女性がお茶を運んできた。
「ありがとうございます。」
一礼して出ていく姿を見送る。さてと、芝居は此処までだ。
「さて、水原さん。随分舐めた真似してくれましたね。」
作り笑いがひっこめられ、眉間に皺がよる。
誰が入ってくるかわからないから、話は手短に進めなくてはならない。
「水原さんの所に立誠会は報告をあげていないのかしら?」
「立誠会?それは何の集まりだ?」
あの女は「手助け」をどこに頼むか言っていなかったということか・・・。
自分がすべてをコントロールしているとでも思いたかったのか?あのバカが。
「美穂って女に頼んだでしょう?困らせたい相手がいたはずです。」
「な、なにを言い出す!」
「何を?自分の胸に聞いてみればいい。わかるでしょう?しらばっくれても今更です。」
水原は立ち上がろうとして止めた。逃げ出しても解決にならないと思いなおしたのか、狡い笑みを張り付けて口をひらいた。
「証拠はあるのか?」
「ええ、ありますよ。ちなみにね、ターゲットとして狙われた男性ですが、脇腹を刺されて重傷です。
殺人未遂。証拠といいましたか?それを警察に売ったら、困るのは水原さんでは?」
「さ、殺人?そんなことは言っていなかった!SEXシーンをビデオに収めて、それと引き換えに・・・」
途中で口をつぐんだところで後の祭りですよ、水原。
「ちなみに私は山室の秘書でもなんでもないです。私は大水蒼の代理でここにいます。」
ばね仕掛けのように水原が立ち上がる。
カタカタと震え、額には汗が浮かびはじめた。
「そういうことです。蒼はすべて、お見通しです。
大学時代の部活の先輩で七つ葉に入社したあとは上司になった男に頼みごとをしたはずです。出馬に際して目の上のタンコブになるような物を取り返したい。」
力が抜けたようにヘナヘナとソファに沈み込んだ。
「紹介された女は美穂という名前でしょう?胸のでかさが自慢の女ですよ。ついでにSEXはいかがでしたか?買ってまで寝たくなるような女ですかね、アレは。
そんなことはどうでもいい。蒼のパートナーの情報を得て作戦が決まった。SEXシーンを撮影して、蒼が持っている自分の卑猥な画像と交換するために、そうでしょう?」
顔面蒼白、閉じられた瞼。
宏之の顔と同じじゃないか・・・。キリストのように縛られ、脇腹から血を流していた!お前のせいで。
「ちなみに、これが欲しがっていた写真です。」
テーブルに投げ置いた写真がパサっと音をたてる。
薄く目をあけて写真を認めると見開かれ、すばやく手をのばして握りつぶした。
「そんなもの、どうでもいいですよ。今となってはね。蒼の忠告を無視しましたね。」
「忠告だと?」
「もう汚点になったから、その女を切るべきだと言われたはずです。しかしまだ関係継続中とは呆れてものも言えません。」
「・・・なんだと?」
もう一枚テーブルに写真を置く。
ありふれた母娘が手をつないで何か言葉を交わしながら歩いている姿。
「こ、これをどこで!」
「どこで?一番よく知っている場所ですよね。毎月の支払、あなたの子供の頃にそっくりの女の子。
女と寝ている写真ぐらいはお父様に頼めばどうにでもなったはずです。しかし・・・隠し子となると、入るはずの票がごっそり消えるでしょうね?特にあなたの笑顔が素敵だと群がる女性票が。」
「欲しいのは・・・金か?」
「バカにしているのか!」
【 パシン!! 】
一発の平手ぐらい、いいだろう?
水原は何が起こったのかわからないという顔を浮かべて、頬を押さえた。
殴られるのは初めてなのかな?お坊ちゃん。
「あなた自らが蒼の尾行をしたわけじゃあるまい。どこからの売り込みか吐けば、娘の公表はしない。
約束しよう。」
「ど、どこに、その保証がある?お前が嘘をいっているかもしれないだろう!」
「じゃあ、交渉決裂ですね。帰ります。」
写真をバッグにしまい、立ち上がって背を向けた。わたしにとってはどうでもいいことだ。
この男が政治家になろうが週刊誌のネタになって世間から叩かれようと・・・どうでもいい。
「わかった!帰るな!言うから!」
「じゃあ、手短に。嘘が覘けばすぐに帰りますからそのつもりで。立ったまま聞きます。」
水原は諦めたように話だした。
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