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「まず状況を説明しよう。アンタは手をだしちゃいけない者に悪さをした。お前が尾けていた男は、俺の幼馴染。水原に売ったほうは、俺の弟。どういう状況かそれで理解できるだろう?」
後部座席の真ん中で縮こまっている藤崎は顔面蒼白だった。斉宮と俺に両側を挟まれ、どこに連れて行かれるのかと怯えていたが、俺の言った言葉を飲み込むと今度は汗をダラダラこぼし震えだした。
「それと水原ですが、アレは既に私の持ち物なのですよ。それに迂闊に手を出すとは・・・。
そんなんだからいつまでたっても売れない。」
「なっ!」
「チンケなプライドはもう捨てたほうがいい、この先プライドは自滅を招くだけだ。
捨てないと気が狂いますよ?そういう場所で働いてもらいますから。」
ガタガタ震えながら、必死に頭を回転させているのだろう。
せわしなく目がキョロキョロあたりを見回し、どこかに逃げ場がないか探している。
あるわけがない、残念だな。
「十分な研修期間をとる。その後とある人の使用人になってもらう。」
「使用・・・人?」
「ああ、うなるほどの金持ちだ。」
藤崎の目が光る。
使用人の意味を教えてもいいが、希望を潰される方がダメージはでかい。
そうひどいことにならないかもしれない、今そう考えているはずだ。
淡い期待を胸に教授に逢えばいい・・・希望と真逆の世界に堕ちた自分を眺めれば仕出かした事の大きさを理解するだろう。
「行徳、『sin』の診療所にいくから、そこで全員降りる。」
「わかりました。」
「マル・・黙ってないで何か言ってくれよ。知らない仲じゃないだろ?」
縋るように掴まれた腕をぞんざいに振り払った斉宮は、これ以上ない冷たい目をして藤崎を見た。
「バカは嫌いです。私にも救えませんよ。だってね、この男が大事にしている弟を売ったのですよ?
その後彼がどうなったか知っていますか?刃物で刺されて重傷です。」
「ま、まさか!そんなはずはない。水原だってそんな危ない橋は渡らないはずだ!
ハッタリかまそうたってそうはいかないぞ!」
斉宮はいきなり藤崎の鼻を力いっぱい摘まんだ。ねじ上げるように力を込めたせいで藤崎はのけぞる。痛みによる涙がボロボロこぼれ、その一滴が斉宮の袖に落ちた。
「汚れが沁みこむ、よけいなことを。」
「いてぇぇぇぇ!」
振り払うように鼻を離すと、藤崎が喚きだす。
「水原はヤクザを雇ったんですよ。そいつらの仕業です。この間逮捕されていたAV販売のヤクザ。
別件逮捕ですが、ゲロったら水原もお前も塀の中です。」
「そ、そんな・・・。」
「水原はこれから使い道があるが、お前はどうだ?役に立つのはその身体ぐらいだろう。
これからチップを埋め込む手術を受けてもらいます。
研修後は金持ちの所にレンタルされます。逃げても無駄ですよ。チップで居場所はすぐにバレますからね。」
「使用人って・・・。」
「さあ?お前を借りる金持ち次第だな。」
すっかり萎んだようにおとなしくなった藤崎は目的地に着いたあと、行徳にしっかり拘束された状態で
診療所に連れて行かれた。
「気が進みませんが地下に降りますか・・・。嫌なことはさっさと済ませるしか解決方法がない。」
「ああ。済んだあと5Fに行けば小鳥を眺められるだろうさ。」
眉が片方あがる。
「5Fは事務所ですよ。このビルの上に住めるほど無神経ではありません。ちゃんと快適な住まいがありますからご安心ください。一番上は半分のスペースが金庫室、もちろん金はそこにはない。」
「金より重い情報の山か・・・。」
「桜沢の宝探しの戦利品、保管してあげましょうか?スペースは充分です。」
「あああ?」
「このビルの名実ともに「支配人」になるのです。ここを支配し力を各方面に沁みこませる。
権田の手が及ばない聖櫃が必要。であればここが一番適している。
今借りている倉庫はダミーとして存続させておけばいい。移動はこちらでやります。
行徳も三原もネオもナシ。
私と桜沢の秘密ですよ。フフフ・・・楽しくなってきたじゃないか。」
楽しいことなのか、違うのか・・・。今の俺には答えはでない。
ただし直感は言っている。「斉宮を敵にまわすくらいなら、共にいるほうが道は拓ける」と。
「楽しいついでに、嫌なことをやっつけてしまおうじゃないか。」
「それは承諾ということですね。」
俺の世界は変わりつつあり、沢木とは違う領域に足を踏み入れようとしている。
その場所がどんな所であれ、沢木と関を守り続ける力を持とう。
斉宮と共に「力」を得る。
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