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二人の関係
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「ふぁ……」
陽が目を覚ますと、影宗が隣で寝ていた。もう今では陽が影宗より先に起きるのは当たり前のようになっていた。
昔は、陽の方が遅かったというのに。
フッと笑って影宗の前髪を払う。起きない。すべてを陽に預けて眠っている。
「もー……。そんな可愛いから、アンタを狙う客が多いのよ」
そっと寝ている影宗にキスをして陽はベッドから起き上がった。
後処理はしてくれたらしい。疲れてしまって、ほとんど覚えていないが。勿体ない。
「ま、知らないんでしょうけど。鈍くてホント嫌になるわ」
シャワーを浴びた後、お得意さんにメールを送る。いわゆる営業メールだ。
陽の客は男だけではない。時に女も彼の美しさに惹かれて彼を買う。
その後、電話をかけた。
「マスター?昨日の売り上げ、どれくらいかしら?……随分入ったわね。え?辞めてもいい?冗談でしょ?」
辞める気はない。稼げるだけ稼がなければ。時間は有用、男娼なんて今だけの特権なのだから。
少なくともまだあと数年は続けるつもりだった。たった一つの誤算、影宗が隣に居て体の関係を持ったこと以外は。
こんなつもりは無かった。昔みたいに、空気も読まずに勝手に追いかけて。
そうして隣にいるんだから、呆れるしかない。この関係を友情だと信じて疑わない幼馴染にも、自分の愚かさにも。
元は真面目で優しい男だった。派手なアクセサリーを付けて、タバコも吸うようになって、男娼の味まで覚えさせてしまったのは紛れもなく自分だ。
彼の両親には一生頭が上がらない事だろう。
「それより、今日はどうなの?良さそうな客からのお誘いはあったのかしら」
マスターに聞いて、今日の予定を立てた所で影宗が起き出して来た。
まだ若干寝ぼけた様子の彼は、普段の真面目そうな雰囲気とは違ってどこか可愛らしい。
「おはよう、影宗。マスターから連絡あったわよ」
「お前の出勤の話だろ……」
「アタシ達の生活費の話でもあるわよ」
他人事のように返事をして、ボーっとした影宗では理解出来そうにもない。身支度が先かと息を吐いた陽は、朝食の準備を始めた。
「眠い……」
「昨日飲んだの?」
「飲んでない……」
まだ酒が抜けていなくて眠いのかと思ったが、いつものことだったらしい。
陽が苦笑しながら、出来上がった朝食を影宗の前に出す。
「はい、アタシの朝食なんだからいつも通り期待なんか出来ないわよ」
「食えればいい」
「それだからまたお母さんに心配されるんじゃない」
お母さんとは、勿論影宗の母親の事である。時折息子が心配になるのか、連絡してくる。
その時に陽が出たとしても、陽も含めて元気かと心配してくれるのだ。
食事が終わった頃に、影宗の仕草がしっかりとしてきた。
「ようやく目が覚めたかしら?」
「朝は何か眠いんだよ……」
寝坊助ね。陽がそう言ってあどけなく笑う。
影宗にとっては、その笑顔こそ大事だなとぼんやり思った。彼を見つけた日の事は、今でも覚えている。
「で、今日の客の話でもマスターとしてたんだろ。程々にしとけよ」
「そうね。でも今日はアタリの客が来そうだから、ノッちゃうかもしれないわね」
「ノるな」
その時だった。スマホから聞き慣れない音が聞こえた。
陽がそれを聞いて目を丸くした。「あら」なんて心底驚いた声付きで。
「嘘でしょ、この間の女の子だわ」
「女?」
「そ」
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