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意訳「愛しています」
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「隣に、居たかった」
ぽつりと零された言葉に、陽は笑って問いかけた。
「客達の言うような理由はあったの?」
「ない」
「じゃあ、アタシにもないのよ。ただそれだけ」
生きるのに必死。アンタといる事に必死。それだけよ。だから何も諦められない。
そう言って笑い飛ばす陽に、影宗がようやく笑った。
「わがままだな」
「あら、そのわがままだって長く続くか分からないのよ。アタシはホストじゃなくて男娼なの。ホストよりも短い間しか働けないかもしれないのだから」
「そう、か」
色々と不安な事は沢山ある。アルビノであることも大きな不安要素だ。
今の状況がいつまでも続くとは思えない。いつまでも今のままではいられない。
「アタシだって臆病なのよ、これでも。アンタがアタシを捨てる事だって考えられる。だって、アタシは追いかけて来たアンタに付け込んでいるだけだもの」
「そんなこと!」
「言葉にしなければ、そうとしか言えないのよ」
たった一言。好きだと、愛しているとは言えない。言葉にしたら、それは溢れ出て。
余計な火を増やして燃え上がり、全てを飲み込んで焼き尽くすだろう。
態度がそうだと言っていたとしても、言葉にしなければ疑いの範疇を超えない。
「それでも、アタシとの関係を続ける?これ以上進むことが無いと分かっているのに」
陽は単刀直入に言い放った。影宗は迷うのではないかと思いながら。
例え、この関係が終わろうとも譲れない。それは拾ってもらったマスターの為であり、店の為であり、影宗の両親の為でもあった。
「続ける気しかないな。お前の心さえあれば、何もいらない。聞けて良かった」
「即決!?もうちょっと考えなさいよアンタ!大学出たでしょ!?」
「側に居たい以外に、考える事があるかよ」
ぶっきらぼうに言われた言葉に、陽の顔が真っ赤に染まる。肌が白いから、尚更艶めかしく見えた。
「アンタ、本当にそういうとこよ……」
「何だよ」
さっきまでの落ち込んだ様子はどこへやら。影宗は吸い終わったタバコを灰皿に押し付けて、二本目を吸い始めた。
「そういや、お前。何で、店じゃタバコの箱を持ってるんだ?吸えないだろう?」
「その匂いがあるから、わがままも言えるのよ。アタシ」
素直じゃない言葉。
言えない一言。
その言葉は、きっと代わりに互いへ伝えた。
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