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遂に自覚しちゃった主人公。
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『キスしてもいいか?』
水戸洋平自身、自分が吐いたその言葉が何度も何度も頭の中でリピートされた。
「よ、酔ってんのか…?」
「はは、飲んでねえよ」
笑う水戸は いつものに変わりなくて
さっきの台詞が嘘のように感じてしまう桜木。
でも現実。
それは言われた張本人の桜木が一番理解していた。
「…ち、ちなみに聞くけど…それって…その…あのだな!…どういう…意味で言ってんですか…洋平くんよ…!」
精一杯、しどろもどろになりつつも
聞きたいことを口に出す桜木花道。
すると水戸は ニコリと笑って「…そのまんまの意味。」と桜木を抱きしめながら彼の耳元で囁く。
「っ…ぅ!?」
ビクゥ!と肩を大きく揺らした桜木の顔は真っ赤を通り越してまるでゆでダコのよう。
「よ、洋平っ…」
「ごめん。くすぐったかった?」
「…っ、あたりめーだ…!」
水戸は待った。
彼の答えを。
水戸は覚悟を決めていた。
全ては彼の答え次第。
yesと言われれば もう止めるつもりはないし
noと言われたら 「ドッキリでした」なんて言って誤魔化すさ。その瞬間から友達に戻る。戻ってやる。無理やりでも…
(それが花道の望む 俺らの末路なら。)
「はな…」
“好きだ” とは言わない。
言ってしまったら最後だろうから。
俺は臆病者だ。…だが何が悪い?俺はこれでいいと思ってる。
こんな格好悪い自分は知りたくなかった。
そう思ってたけど いいんだ。
俺が隠せば 伝えなけれりゃ
何もさらけ出さず 笑っていれば
きっとお前は笑い返してくれるから。
いつものみてぇに バカやってくれるから。
そんなやつなんだ、花道…おまえはさ。
『キスしてもいいか?』
切なげなその声。
久しぶりに聞いた…
いつだったか 聞いた覚えがあるその声は
桜木の心を大きく揺さぶった。
(洋平は 友達だ。仲間なんだ。)
理解はしているはずなのに、
胸が高鳴り
鼓動が今まで以上にうるさくてたまらない。
(だから、キスなんか…嘘なんだろ?
冗談だ、ドッキリに決まってる。)
いつもみてぇに頭突きを喰らわせりゃ
『バレた?』なんて言って涙目でヘラヘラ笑うんだろ?洋平。
「洋平…」
声をかける。
抱きしめられたまま、そのまま。
「…うん。」
「…そういう冗談は好きじゃねえ…」
「知ってるよ。」
水戸は答えた。
その優しい声色に桜木はドキドキがもっと激しくなるのを感じてしまう。
(…なんで俺、こんなに…ドキドキして…)
彼は戸惑いつつも ひとつの仮説を見つけた。
それは 恋 。
だってオカシイ。どう考えても。
男同士でキスしてもいい?なんて聞かれて
気持ち悪くない。むしろ嬉しいくらいに思う自分がいる。
桜木はわからなかった。これが恋なのかなんなのか。
だからこう考えた。
洋平と一度、唇を重ねれば
それが 偽物か本物かわかるのではないか。
彼なりの 精一杯の答えの導き方だった。
「洋平!!」
「…うん」
「してみろ…!キス!!」
大声を張り上げる桜木。
水戸は驚きながらもこう聞いた。
「…マジで言ってる?」
「…おう!!俺、よよ、よっ洋平のことが好きなのかもしれねえ…!ドキドキ!するし…っ!でも…ほんとーかわかんねえよ!
…それなら…キスしてみて確かめてぇ…っ」
水戸は 口元を緩ませた。
それは思わぬ言葉だったからだった。
(…わりいけど、花道…
キスだけで留めさせられるほど…俺、大人じゃねーかもよ?)
「わかったから落ち着け、花道。」
水戸は 内心どんだけ腹黒いことを隠してても冷静なふりができる ある意味ツワモノである。
「目閉じて」
桜木の耳にそっとつぶやく水戸。
わざとだ。これはわざとだ。
だが桜木は気づかない。
それどころか 顔を赤くして震えている。
そしてゆっくり目を閉じた。
────ちゅ…
可愛らしいリップ音が部屋に響く。
その瞬間、水戸は思った。
(あ、無理。とめらんねーわ。)
そんな水戸の心情なんか知らずに
終わった!って思った桜木は目を開ける。
でもまだそこには水戸がいて
しかも頭を押さえつけられてて動けない。
(ぬぁ!?なななな!?)
「花道…」
唇が離れたかと桜木はキスをしてみて
どう感じたか自分の心のうちを話そうとしたその時
開いた口に 水戸の舌が滑り込んだ。
「…んんっ!?」
桜木は驚きながらも水戸の舌を受け入れてしまう。
拒めない。
水戸の熱っぽい視線が 吐息が
何もかもを狂わせる。
「…っ、ん…は…っ…」
────くちゅ、くちゅ…
官能的な音が桜木の耳を犯していく。
(洋平…!……だめだ…!!)
そう思ってるのに
舌が絡み合うのを止められない桜木。
口の端から涎が垂れる。
それを洋平に吸われる瞬間が一番はずかしく感じた。
しかもどんどん力が抜けていく。
まさに洋平のされるがままだった。
ああ…なのに、気持ち悪くない。
…むしろ、気持ちいい。
昨晩を思い出した。
あの時の洋平とのキスも嫌じゃなかった。
俺は…洋平が好きなんだ。
桜木は静かにそう思った。
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