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ポロポロ出ちゃうの、本音ちゃん。
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「花道」
「ウワッ!」
宮城の背中が見えなくなるまで見送った花道と洋平。
だったが、宮城の姿はもうないのに
全く動く気配のない花道に声をかけてみた。
そして予想通り、彼は大げさに声を張り上げた。
「部屋、行こうぜ。寒いし。」
「おお…おう!そう…だな、よし!」
ダンダンダン!と大股で先頭を切って階段を登る桜木。
その後ろをついていく水戸。
そして彼は思った。
(…挙動不審ってのはこういうのをいうんだろうなぁ
つーか、花道のやつ意識しすぎだっての。嬉しいけどさ。)
口元を緩ませた水戸は桜木の手を握った。
「ぬぁっ、なんだ洋平っいきなり!」
「いいだろ?」
「うぐっ…いいけど…
けど!も、もし御近所さんに見られたら…」
「ああ、そんなの…俺らは仲良しの親友ですって言っとけばいいじゃん」
「……」
ピタリ、
桜木の足が玄関前で停止した。
「ん?どうした、鍵あいてるんだろ?」
「……そ、そうだ!あいてるあいてる…………………って、もう手は離そーぜ」
「……ん、そうだな」
ぱっ、と手を離した洋平だったが
何となく花道の様子に違和感を感じた。
「……」
がちゃっ。ドアがゆっくりと開き2人は無言で中に入った。
「花道」
「…!」
グイッ。
桜木の腕を掴み、自分の方へ近づけると
桜木は脱ぎ掛けの靴が引っかかり
バランスが崩れコケてしまった。
「いって…」
「あ、わりい。」
「なんなんだよ洋平っ」
「なんかオマエ、様子おかしいなって思ってさ。
まさかズッコケるとは、悪かった。大丈夫か?」
苦笑しながら花道の上体を起こしてやる。
すると2人向き合った形になり、顔が近く
互いの吐息が交じる。
「…だいじょうぶ…天才だから」
「…花。」
「…なんだよ」
「ほんとになんでもねぇの?」
「…なにがだよっ」
「だから、玄関前のとこで何かオマエ様子おかしかったじゃんか。それ。
なんでもねーの?」
「べっ、別に…なんでもねーよ!」
ポイポイ!とくつを脱ぎ捨て
ズカズカとリビングまでの廊下を歩いていく桜木。
その後ろ姿を見ていた水戸は
(ぜってー嘘じゃん。)と思っていた。
そして同時に桜木は思っていた。
(…言えるわけねぇ。ただの仲良しの親友って言われたのに傷ついたなんか!…言えねぇだろ!洋平のバカ!)
「…ったく。靴がバラバラ。ちゃんと揃えろよな」
ぼそっと呟きながら
桜木の脱ぎ散らかった靴を並べる。
その後自分も靴を脱ぎ、
桜木のいるリビングへ向かった。
「はーなみち。」
「…フン」
「…おいおい、やっぱ怒ってんじゃねーか
俺なんかした?なぁ、こればっかりは言ってくれねぇとわかんねーんだけど…。」
桜木の座っているソファーの隣に腰掛ける水戸。
「なあ」と呼びかけながら頬を軽く引っ張ってやると
「やめろって」とその手をはたかれた。
ムスッとしている桜木。
そんな様子を見て水戸は面倒くさそうに
「はぁ…」と溜息を漏らした。
水戸は何故桜木が拗ねているのか
理由が見事に全くわかっていないのだ。
「俺、帰ろっか。」
「…えっ」
当然の水戸の発言に思わずポロりと驚きの声が漏れる桜木。
ズキリと胸が傷んだ。
「なんか機嫌わりーんだもんお前。
つっても俺何もした覚えねーしよ。ま、イライラしてんだろ?ここ数日いろいろあったしな。」
ソファーから立ち上がる水戸。
桜木は眉をひそめながら悲しそうな表情をした。本人は無意識だが。
花道は思った。
違うそうじゃない、違うんだ。
そう言いたい。帰って欲しくない。
でも口が動かない。
「こんなの…俺らしくねーんだよ…!」
「…は?」
「…っあ」
心の中でグルグル思っていた切れ端が
声に出てしまった。
慌てて手の平で口を隠すが
もはやそれは何の効果もない。
「…花道らしくない?」
「…チガウ!ちがうぞ、洋平…今のは…!」
「なに?」
「…うっ」
言葉に詰まる。何も言えない。
だって、そうなんだ。
今の俺は、最近の俺は俺らしくねぇ。
考えてしまうんだ。
今まで…どう洋平に接してきたのか
話は?表情は?距離は?
忘れた。
何もかも始めからのように思えてしまう。
「花」
どき。
ほら、見ろ。洋平の声が、俺の耳の中にスルスル入ってきてそのまんま俺の心臓までいって
んで、ドキドキさせんだよ。
鼓動がもう…バクバクで…
洋平のせいだ。
なにもかも おめーのせいなんだよ洋平!
「洋平がわりーんだ…!」
「…俺?」
「洋平が…っ、俺をおかしくさせてんだ!
だってもう…俺、なんか…ドキドキっての止まんねーんだもん、どうしてくれんだよ!!洋平のバカヤロー!」
「!」
シーンと静まり返った部屋の中。
桜木花道の本音が出てしまったのだった。
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