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何処からともなく来るモノ。
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「は、花道…大丈夫かよマジで…」
汗を垂らし、眉を八の字に下げた水戸が
心配そうな声を上げる。
1度水戸の家まで帰り、
そこから歩いて学校まで向かっている2人だったのだが
桜木は腰の痛みを強がっていた。
だがどう見ても見栄にしかみえない。
「おい花道…やっぱり今日はフケようぜ…
なんでそこまでして行きてーんだよ?」
「よ、洋平!俺は痛くないぞ!!
全っ然痛くないんだっ!」
引きつった笑顔を浮かべる桜木。
桜木はこう思っていた。
水戸に自分を責めてほしくない。
俺がこうなったのは水戸のせいなんかじゃない。
俺は痛くない。
痛くなければ水戸の罪悪感もきっと減る。
だから、だから痛くない!
そんなフリをする!
そう心に決めていた。
何も知らない水戸は桜木を心配そうに、いや呆れながら
ただ見ていた。
「…花道ぃ」
「…ふぬっ、ふんっ、」
1歩1歩確実に前へと足を踏み出していく桜木。
しかしかなりのへっぴり腰だ。
────その時、
ドムッ!
「ふぬぁっ!?」
桜木の横腹にヒットした、してしまった
ひとつのサッカーボール。
その一瞬に激痛が走り、桜木は顔を歪めた。
ぐらり、と揺らぐ桜木の体。
ふわぁ…っと真っ青な雲一つない空が
目に映る景色をいっぱいにする。
「花道!!!」
洋平の声がして、
地面に叩きつけられた…
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────────────
────
なんだ…?
ここは何処だ?そこらじゅう見ても真っ黒で何も見えない。
『花道』
「…!洋平…」
気づくとすぐ隣で洋平があぐらをかいて
こっちを見て笑ってた。
『イキナリなんだけどよ
…花道さ、俺のこと好き?』
「えっ、な、なんでだ!」
『いやなんか愛を感じねーっていうかさ』
洋平はずっと笑ったままだ。
照れもせず、怒りもせず、悲しそうな顔もしてない。
ただ笑っている。
ニコニコと明るく。
────…これはなんだ、夢なのか?
『花道俺さ…お前が好きだよ』
「…洋平?」
『でも…なんか…ダメなのかなーってよ。
最近そう思い出したんだ。』
「…!」
ズキン…
心に尖った鋭いものが突き刺さる。
ブシュッ、と音を立てて
どろどろの血に似た
なにか、どす黒いものが溢れ出していく。
洋平は笑っている。
世界は真っ黒に染められている。
涙も出ない。
パリン!
何かが割れる音がして
洋平から目を逸らし、周りを確認した。
黒く塗り潰された世界が
気づけば鏡になっていた。
桜木の姿が映り、
水戸の姿が映っている。
『そろそろいい時期じゃねぇかって。』
…ズキンズキンと
傷口から溢れ出す液体がゴポゴポと音を立て始めた。
「イヤだ…洋平、なんでそんな事言うんだよ!!!!」
────俺が壊した。全部俺のせいだ。ごめん、ごめんな、花道……
ポタっ…ポタっ…
ふと気がついた。
鏡の中の洋平が 顔を歪ませながら
泣いていたことに。
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────────────
────────
「花道!花道!!」
「…っぁあぁっ!?」
突然視界に洋平の顔がドアップになって
うつしだされた。
水戸は公園のベンチに座り、
桜木を膝枕していた。
「よかった、目覚ましてくれて…
お前が倒れたときゃマジ焦ったんだぜ…」
ホッと息をつきながら笑う洋平。
どうやらさっきの は、
夢だったようだ。
あんまし覚えてねーけど。
でも嫌な夢だった。
なんか…スゲェ…悲しい夢だった気がするんだ。
忘れてよかった。思い出したくねぇ。
なんだか心にポッカー!と穴があいちまったみてぇに寂しい。
「洋平…」
「ん、どうした?なんかイテェのか?」
優しい洋平の声に安心した。
俺は洋平の逞しい腰に抱きつきながら
ただひたすら 名前を呼び続けた。
洋平、洋平、洋平────…と。
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