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普通とは一体なんだろうか。
人は必ず紙一重ではない、同じ人間なんているはずも無いのに、人は普通を決めたがる。
そして、勝手に定義された普通から足を踏み外せば、人は軽蔑の眼差しで差別し始める。
何故戦争が消えないのか。
それは自分と違う民族や文化を受け入れることができないから。
何故イジメが消えないのか。
それは自分と違う価値観を持っている人間を受け入れることができないから。
人は視界がとても狭くて物事を広く考える事が出来ない生き物だから、自身の見えてる世界が全てだと信じて小さな世界で物事を進めてしまうのだ。
そんな自分勝手で、愚かな人間は誰かを傷つけて生きていくのだろう。
被害者の気持ちなんて知らずに、偽善者面で嘲笑いながら、正義を気取るのだろう。
そして"フジタ スズヤ"という男もまた被害者の一人だった。
スズヤは、楽しい、嬉しい、そんな当たり前の感情すら薄くなり、16歳という若さで愚かな世界を知っている。
スズヤはリビングの角から電源が切られたテレビの画面を見つめれば、黒い画面に映し出されたのは醜い自身の姿。
汚れのない白い髪と肌、ガラス玉のような赤い瞳、棒のように細い体。
異様な雰囲気を出す彼はアルビノと呼ばれ、彼は先天性白皮症を抱えている。
生まれ持ち遺伝情報の欠損により 先天的にメラニンが欠乏する病気であるため、体が非常に弱く、色素が無かった。
彼は上であろう整った顔を持ち合わせていたが、人々は一線を置き彼を接する。
それはスズヤが普通とかけ離れた存在だからなのであろう。
そんな彼が普通と違うと気がついたのはいつ頃だったであろうか。
嗚呼、そうだあれは確かスズヤが小学校に上がるずっと前のお話し。
ある日の深夜。
喉が渇いた幼いスズヤは飲み物を求めてリビングに向かったのだが、深夜だというのにリビングから一筋の光が伸びていた。
深夜に電気がついてる光景に、いくら幼い子供でも不審がるであろう。
スズヤ恐る恐るリビングを覗いた。
覗いた先では父と母が口論をしていた。
口論はスズヤに関する内容のようで、母はありったけの声で叫んでいた。
「スズヤは人とは違う」、「スズヤは病気を持っている」、「スズヤは気持ち悪い」、「スズヤを産まなきゃよかった」
そんな母の言葉は無論、当時幼かったスズヤを傷つけ、同時にスズヤの中で必死に繋ぎ止めていた感情が弾けてしまった。
その後、両親は離婚した。
今思えば離婚の原因は自分自身だろうと予測できてしまう。
口論の時に放った言葉からわかるように、母はスズヤを愛しておらず、ただ「親権」という社会的責任だけで子育てしていたのだ。
だからこそ母は社会的責任から解放されたいがために、離婚を選んだのだろう。
当然、スズヤは父に引き取られた。
正直に言うと、口論を目撃する前から「自信は愛されてないのではないか」と薄々感づいていた。というのも実はスズヤには2つ上の兄が存在しているのだが、兄とスズヤでは愛情のかけ方に差があった。
当時の兄は欲しい物は何でも与えてもらい、よく両親と旅行などを楽しんでいた。
そんな兄とは裏腹にスズヤが与えてもらえる物は必要最低限。
旅行などについては、スズヤが日光の苦手なアルビノだからという理由はあっただろうが、スズヤを連れて行くことはまず無く、自宅で留守番が多かった。
兄に愛情を注いでいたのは当然父も同じだった。
離婚後、兄は母に引き取られたのだが、父は愛した子供を手放さなければいけない悲しみに酒に溺れ、スズヤに手を挙げるようになった。
そして現在はというと、そんな屑のような父は胃癌になり、16歳のスズヤを置いて先月他界してしまった。
その後、まだ未成年であるスズヤは必然的に母に引き取られる形となったのだが、当然再会した母はスズヤをよくは思っていない。
母は彼の名を呼ばないし、当時は仲がよかった兄ですらスズヤに冷たい状態が続いていた。
母方に引き取られた時、高校を転入しなくてはならい状態で、兄と同じ高校に転入したのだが、学校でもアルビノである彼に居場所は無い。
誰もスズヤに話しかけないし、誰もスズヤと目を合わせない。
幸い、"クラス内"のイジメ、暴力的な被害はあってないので、まだ恵まれてる方なのではないかとスズヤの中では妥協している。
正直に言うと、イジメが無いと言うか、兄が少々"問題児"だから、弟のスズヤをイジメられないって言った方が正しいのかもしれないが。
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