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「お兄様達はずいぶんと遅い登場で」
不良として、リーダーとして、プライドの高い彼であれば必ずこの場に来ると読んでいたスズヤの視界には、ここ一か月で見慣れてしまった兄リクトの姿と、青メッシュを入れた男が見えた。
彼らが来るなり女子たちは桃色に似た歓声を上げ、男子達は面白くなさそうに苦々しい顔を作り上げる。顔の整った彼らはちょっとしたアイドルなのであろう。
様々な理由があるものの、注目の的となっていたリクトの黒い瞳が一瞬スズヤに流れたかと思いきや、睨みと舌打ちで返した。
「お前が今のいままで、どんなふうに身を守ってきたのかようやく謎が解けた……が、くそ胸糞悪い」
スズヤに聞こえる程度一言投げかけ、「てめーも気にくわねーんだよ」と突然地に這いずり回る金髪の男に蹴りを入れ、重い音が鳴り響いた。
「俺が気にくわねーなら卑怯な手使わず正々堂々攻めて来い」
金髪の男は不思議な笑みを浮かべさせ、ぜえぜえ肩から息をしながら立ち上がれば、唾を床に吐き出す。終いに腕を伸ばし中指を何度か持ち上げ、その行動は「かかってこい」と意味する暗黙の合図。
癇に障ったリクトは眉の間にシワを作りあげ、指の関節を鳴らし戦闘態勢に入が、そんな彼をスズヤは咄嗟に止めに入る。
「何のつもりだお前」
「少しは頭使ってこの状況考えろよ」
「俺に指図するつもりか」
結果は見えていた。だが「もしかしたら」と思っていた。だが彼に「もしも」などある訳が無く、聞き耳すら持たぬ彼に「だめだこりゃ」と呆れ返るスズヤは、リクトから一歩、また一歩とは慣れてゆき、首を横に振りながら口を開く。
「ここからは俺の独り言だから、聞きたく無いなら無視すればいい」
「はぁ?」
完全にスズヤに流されるリクト。
そんな二人が面白いのか、青メッシュを入れている男は、鼻から笑い出し、リクトは目を見開き睨みを返す。
「マナブ、何笑ってんだ糞が」
「嫌、あの天下のリクトが弟の流れに飲まれるとか面白いなと」
「ぶっ殺すぞ」
マナブと呼ばれたこの男は幹部の一人。
リクトの右腕であり、部下をまとめる。いわば力で部下の前を歩くリクトは憧れ、マナブは部下の信頼を作る中和役。
まだ会った事は無いがもう一人の幹部は天然だと噂は聞いているので、空気の流れを変える役なのであろうとスズヤは考えている。
狙っているのか必然なのかはさて置き、人間性でもバランスのいいグループと言えた。
スズヤは長ったらしく続き、終わりの見えない二人の会話を断ち切る為「多分、侵入者は一人では無い」ため息混じりで出せば、辺りは一気に静かとなる。
金髪の男がその台詞後、一瞬焦りを見せたのをスズヤは見逃してはいなかった。
「今回は兄貴をここに誘き寄せる為に仕組んだ事で、大方他の侵入者連中は残りを潰しに集中してると俺は考えてる」
数分前、リクトは自身を狙って何の得があるかと問いた時に、彼は「お前を狙え潰し、人質に取れば……」と口走った。そこまで聞けば、次に出てくる台詞として考えられるのは「人質として相手を別な場所で呼び出す」か「人質にこの場で呼び出す」の二通り。
前であれば、少なくともリクトが来る前に連れ出さなくてはならない。だが、彼は連れ出す素振りなど見せず、スズヤをこの場で潰す事を選んだのだ。
つまり作戦は後となる。
次に出てくる問いは「何故この時を狙い、実力差がある彼の前を一人で怯まず立ち上がるか」である。
一人で挑むには危険すぎる上、わざわざリクトをこの場に呼び出すメリットが見えてこない。むしろ無駄な労力、自身からリクトを探し出した方が楽であろう。
だが、彼はリクトをこの場に呼ぶ必要性があったのだと考えれば、もともとの狙いはリクトでは無いと考えがまとまる。
そこで出てくる策は先ほどのスズヤの言葉通り、彼らは戦力を削る為、化け物の注意を外す必要性があった。
「人は利益のため動く、この状況から利益を考えた場合にたどり着くのは戦力削り。倒す気なら時間かけるな、多分結構数いるだろーから」
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