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自身が連絡先を教えた事に後悔へ導かれたのは日を必要としていなかった。
変だとは思っていた。だが、まさか人生ゲームの駒が此方側に傾くなど誰が予測できよう。
彼は悪運がよほど強いとお見受けする。
「おい、マナブ。今なんて言った」
「だから、スズヤをうちに引き入れようって」
呼び出しかかったのは、今朝の6時。
随分とお早いお電話に、スズヤは嫌な予感しながらも出てみれば「放課後空いてるか?」と欠伸混じりの一言。その時断ればいいものの、スズヤも寝起きと言う事で頭が動かず了承してしまったのが仇となる。
呼び出し場所は空き教室。
今は黒風白雨の溜まり場となっているらしく、汚く荒らされた現場は教室の原型がとどまっていない。
空き缶は転がり、テレビにゲーム機が繋がり、鉄パイプや金属バットといった喧嘩に使われているであろう物騒物の置かれている。
学校と問われれば学校であるが、異様な物だ。
そしてあろうことか、スズヤを間に男二人が議論を開始し始めるやいなや、話し本人は蚊帳の外。
早い段階で状況は飲めていたが、その話しまでいたる過程が不明点。また、トップであるリクトすら予想外の動きで彼に食いついている。
「こいつを入れるとはどういう思考回路だ」
「別に喧嘩が弱いわけでも無い。そんでもって頭の回転もいい。幹部入りにぴったりだとは思うが?」
「こいつは喧嘩が強い訳じゃ無い、この前のてめーも見ただろ」
「あれもまた新しい戦術じゃ無い?」
「俺を挟んで勝手に話し進めるのやめて欲しいんだけど」
数日前、マナブは誰かを幹部に入れたがっていた様子であった。また、その人間が頭脳派であり、ある程度強さを持った人間であると聞いた。
その時は疑問を抱きながらなんとなく流してしまったが、この現場を見ては「なるほどな」とツルが解けていく。
確かにスズヤは生徒の中では回転もはやく、また自身では決して思わぬが、第三者から見ればリクトを押さえこめる可能性がある人間かもしれない。
スズヤは見慣れた木と鉄パイプの椅子の背もたれを抱きかかえるように手を回し、顎を乗せ、いかにも「やってられんわ」と表情を描く。
二人はそんなスズヤを見下ろす感じで立ち向かい合い、本人を置いてけぼりに言い合いを開始するものだから、入るタイミングすら難しい。
やっと訪れたこの時さえ、無腹やり感満載である。
「黙れ、これは俺たちの問題だ。口挟むな」
「兄貴こそ黙れ、これはあんたでは無く俺の問題だ」
強気な反撃を直に見ていたマナブは「わお」と言った後、お腹抱えて笑いだす。
そんな食いついてくるスズヤと笑う彼を見てか、リクトは顔を歪ませ、面白くなさそうな表情と共に力一杯壁を蹴飛ばした。
蹴飛ばした先の壁は綺麗にへこみ、「いったい誰が弁証するのか」と考えた先、親であろうと平然と思ってしまったあたり、兄弟揃って親不孝者であろう。
どちらにしても、この問題は頭を使うに一番手では無く、二番手。一番はスズヤを黒風白雨の幹部入りさせたいマナブの話しであろう。
スズヤは「これは俺の推測だが」と言葉を始めた。
「あんた別に戦力増やすだけが目的じゃ無いだろ」
一瞬、マナブが笑顔を失ったところを見逃さず。
証拠は無いが、相手の行動が確信に近ずかせる。小さな動きだって見逃すことは無い。
人はそんな彼を"人間不信"と指をさすかもしれない。だが、だからこそ今日まで彼は"生きてこられた"のだ。
「あんた、頭脳派が欲しいと言っていた。だが、それだけの理由であれば別に急ぐ必要性なんて無い。前回といい今回といい、急いでいるように俺は見えるが」
前回とは、連絡先を聞き出した時のことを示している。そして、それはマナブにも伝わっていることであろう。
つまり、ストーカーのごとく付きまとい、ヤケに聞いてきた連絡先。その行動に意味があるのならば、それが今回の答えであろう。
「回りくどいんだよ、はっきり言え」
マナブがまじまじとスズヤをみれば、「これはお兄さんより色々な意味で強いわ」なんて笑いながら言うもんで、リクトが「あぁ?」と睨みつける。
この男は性格上、リクトを苛立たせる天才であろう。よくもまあ、次々と出てくるもんだとスズヤは呆れ通り越し、尊敬すら生まれる。
無論、褒め言葉では無く貶し言葉の尊敬である。
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