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悪夢に魘された朝の目覚めは最悪であった。
額に手の甲を当てれば汗がじんわり伝わり、寝ていたはずの体は全身で疲労を感じている。「なんで、今更昔の夢なんか」と思わずにはいられなかったが、夢は自身で操れる代物で無い為、考えるだけ無駄な労働である。
重たい頭に流されるかのように顔を枕に沈めては、棚に置いてあるiPhoneを手探りに掴み取る。
現在時刻は午前4時。
既にお天道様は元気に上っているものの、若い男子高校生が目覚める時間にしては少々早すぎる時間帯。
重たい瞼を必死にうつらうつら開けてみれば、画面に一通の通知が彼の目に入った。どうやら寝ている間に届いたであろう、昨晩のLINE最新トーク。
マナブから届いた「明日、みんな寝坊するなよ」と短い文章が。
__それは数週間前の話しである。
金髪男問題は、お約束通りリクトの大暴れで病院送りとなり解決。どうやら相手も警察ごとにはせずに、黒風白雨に大きな害無くあっさり終了。
終わりよければなんとやらという言葉はあるが、問題は兄が怪力であること。あれは完全に骨折させたなと、骨折する側の経験者は確信していていた。
そんな外道日常の始まりを告げた数日後、スズヤが黒風白雨に無事入会した後の出来事である。
スズヤが頭を抱えてる問題は、アスカが勝手に「スズヤン」と迷惑極まりない変なあだ名を付け、体格いい黒風白雨の部下が元気よく「スズヤンさん、ちわーす!」と頭を下げてくるようになったこと。
百歩譲って「スズヤン」は理解できるが、千歩譲っても「スズヤンさん」は理解できない上、完全にスズヤンが名前だと勘違いしている。
挙句の果て。休み時間となれば常に両隣には兄とマナブがいる状態になり、「黒風白雨のリーダー」「アルビノ」「メッシュ」の色男三色が横並びになれば、尋常的に程目立つ。
気がつけば先生方はスズヤに近つかず、生徒の態度も一変。女子はスズヤ絡んできては、男子も積極的となる。
絡む人間違えば、辺りの環境がここまで変わるのかと、急変換に対応しきれないスズヤの毎日は疲労の塊。バイトのシフトが入っていない日であればまだ良し、バイトが入っていれば酷な話しである。
そんな日常が変化してしまった放課後の日課は、バイトが入っていればそのまま軽い足取りで学校を出て、バイトが無ければ重い足取りで空き教室へ足を運ぶ。
何をやる訳では無い。
ただ世間話し、ボードゲーム、勉強を教えたり、教室を片ずけたり、そんな日課。
お陰様で、衛生面が心配的であった教室は毎日清潔感溢れ、またアスカは小テストの赤点を逃れた。
これは余談であるが、アスカに勉学を教える行為は思い返したくも無い程、胃が痛く、伝説的な記憶となった。
正直、「戦国時代って1億年前だろ?」とぶっ飛んだ返答がアスカから出てきた時は、流石にマナブに助けを求めたスズヤ。
そんな感じで、何時も通り重たい足取りで胃薬をポッケにスタンバイさせ、空き教室まで足を運べば、マナブが廊下でため息をつきながら突っ立っていた。
「なにやっているの?」
「嫌、今お取込み中でね……」
「はぁ?」
確かに、教室内からは女性の声が微かに聞こえなくも無いが、何を、どうして、どんな風に取込み中なのか理解出来ぬスズヤは、「そんなこと俺、関係無いし」と迷いもせず、スライドドアに手をかけた。
まさかの事態にマナブは「ちょ、待て待て……!」と必死に止めに入るが、スズヤは振り払って思いっきりドアを開けた。
大きくドアが開く事により、「ドン」と大きな音を立て中にいた者の視線が一斉にスズヤに集まる。
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