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そんな憂鬱なスズヤなど目もくれず、マナブは「よいしょっ」と言いながら、リクト側に背中が出るよう抱きかかえ、服を持ち上げる。
スズヤも負けずと必死にもがくが、自身より体格良く、また力もある彼から逃れられるはずも無い。完全にされるがまま。
後ろから「カチン」と日焼け止めのキャップ音が聞こえれば、スズヤは息を飲む。
小さい頃から親はスズヤに触ること嫌がり、更に彼女など作ったことの無い彼は、他人に生身の体など触れさせた経験など無であった。
そんな彼の背中に気温と比例しない冷たい液体がかかれば体をビクつかせ、背中を指でなぞられれば未知の感覚に「ひぃっ」と変な声が自然と出てしまう。
生まれてきてから今日まで、「存在自体が恥ずかしい」その言葉を胸に秘めて過ごしてきた。
故に人と接することを避け、勉学も必死に取り組み、誰にも文句を言わせない生き方をしてきたといえよう。
その生き方が今度は仇となり、知らぬ新たな「恥」を受け入れるほどスズヤの心は完成されてない。彼の心は未熟児なのだから。
スズヤは恥ずかしさあまりに、目をまん丸に見開き、口をパクパク。みるみる白い肌が赤く色付いていく。
その後、指が停止。流石に後ろに座っているリクトも、男に気持ち悪い声を聞けばそれ以上は触れもしたく無いと思うことは当たり前であろう。
スズヤは真っ赤な顔のまま、マナブに「離して」と訴えかけるが、何故だかマナブは決して目を合わせようとはせず、「俺は知りません」と言いたげに口笛を吹き始めた。
「あんたら、いい加減に……っ!」
全てを言い切る前に、止まっていたリクトの指が、先ほどと異なる動き方で再開された。「嘘だろ」と状況が読み取れないスズヤは下唇を噛みながら、くすぐったい感覚と必死に戦う。
器用に指先が触れるか触れないか、そんな行動に「こいつ、絶対わざとやってるだろ」と、見えもしない後ろの男を睨む。
「っ……や、だ」
必死に逃げようと動き回るが、背中を這いずり回る指は彼を追いかけ、押さえつけられた腕は彼を逃がさず。
その指先が背中からお腹に回された頃、「ひっ」と一鳴きし、頭の中が真っ白なスズヤは力一杯マナブの顎に頭突く。
予測不可能な痛みにマナブはうずくまるが、彼を気にとめず、解き放たれたスズヤは「俺、部屋に戻ってる」とビーチサンダルも履かずに駆け出した。
後ろから「おい、スズヤ!」と呼ぶ兄の声が聞こえた気がしたが、振り向く余裕も無く、 太陽により熱された砂浜を足の裏で踏み上げた。
※
「リッくんとスズヤン走り出して、どっかしたのー?」
スズヤが走り去った後、リクトは彼のビーチサンダルとサングラスを片手に走り出してしまった。
アルビノにとって、サングラス無しで紫外線の強いハワイを歩くことは自殺行為。リクトが訳も分からず咄嗟にとった行動は正しい判断であろう。
「……兄弟喧嘩したっぽい?」
「普段よそよそなのに、珍しいね」
それを言うならよそよそしいだろうとマナブは思ってはいたが、ツッコミを入れられるほど余裕は無い。
そんな明らかに態度の違うマナブに対して、いくら単細胞と呼ばれるアスカですら疑問を持つことであろう。彼の顔をアスカが覗き込んでは「ん?」と声を出す。
「何でマーくん顔真っ赤なの?」
彼の疑問の一言が耳に通らないマナブは、自身の髪の毛をわしゃわしゃ掻き毟り、誰にも伝わらぬ独り言をぽつりと落とした。
「普段見せないくせに、いきなりあれは卑怯だろう」
マナブの脳内には、リクトは決して見えることの出来なかった、恥により顔を赤く色付かせたスズヤが表情が離れずに居座った。
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