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「……目開かない」
真っ赤な素足をコンクリート上をペチペチ音をたて、強い日差しの影響で開かなくなった瞳を指先で擦る。無理して必死に開こうとすれば、瞳を守るため勝手に涙が溢れ出し、頬をつたう。
赤い瞳は光の調整が出来ず、まともに見えやしない静かな辺りと、迷子まっしぐらな彼。きちんとホテルに戻れるだろうかと心底不安になる。
「しばらくはコンタクト付けれないか……」
アルビノは生まれ持ち視力が悪い。
スズヤも普段はコンタクトを付けて生活しているが、今回瞳を痛めてしまっている。しばらくは眼鏡での生活を余儀なくされる事だろう。
なんて日だと嘆いてもそれは無意味な行動、時など戻すことは不可能なのだから、諦めるしか無い。
時々聞こえる車、人、動物。うっすらしか見ることの出来ない瞳を補おうと必死に稼働する聴覚。だが、彼も人間なので、全て耳頼りでは限度があるものだ。
耳では感知する事のできない電柱が目の前に立っている事にスズヤは気づかず、彼は衝突真っしぐら。
だが、そんな危険な彼を阻止するために、尽かさず後ろ引きずりこむ人物が背後まで走ってきた。
腕を掴まれ、状況を把握しきれていないスズヤは、されるがままバランスを崩してしまうが、そんな彼を後ろに立っていた人物は尽かさず背中を支える。
「てめーは何処見て歩いてるんだ」
そんな聞きなれた男の声一言でスズヤは息を飲む。今起きた事、支えてる人間、現在の状況全てが把握でき、その者を必死に払いのける。
「わざわざ笑いに来たのかよ、兄貴」
「かもな」
性格の悪い一言の後にスズヤが振り向けば、リクトの目の前には細い目で真っ赤に腫らしたスズヤがそこにはいた。
まさかそんな表情を見るなんて予想もしていなかったであろうリクトは戸惑った後に「何、お前泣いてんの?」と口を開く。そして、スズヤは間を空けずに、「光で目が開かないんだよ」といらん勘違いされる前に彼を切り捨てた。
「だから似合いもしないサングラスなんて持ち歩いてんのか?」
「……似合わなくて悪かったな」
元々仲のいい兄弟を演じていない二人。先ほどの件で、寄り添う事の無い兄弟に「ギクシャク」の言葉が更に追加され、謎の沈黙が気まずさを生む。
体内時計は数分、実際の時計は数秒後。
そんな気持ち悪い空間で、スズヤは中々口を開かず、そんな彼を気にしてくれたのだろうか。先手を打ったのはスズヤでは無く、リクトであった。
彼はリズムカルにスズヤの頭へ何かを何度か当て、スズヤは「なんだよ」と言わんとばかりに眉をひそめながら奪い取ってみせる。
必死にそれを細い目で確認してみれば、驚いた事にそれはスズヤが持参したサングラスであった。
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