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3-2 (R.18)
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スズヤは大きく目を見開いた。
思いもよらないそれは、与えられずに過ごしてきた、既に諦め、既に捨ててしまった言葉。
今更。後十年早ければ捻くれ者にならず、見た目は人と違えど、中身は普通の人として過ごせたであろう。
彼には時が経ち過ぎた。簡単に受け入れられる訳もなく、彼からすれば「綺麗事」の単語であった。
「別に今からでも遅くねーんじゃねえの?」
そんなスズヤの内心を見透かしたかのような一言。見つめられた瞳は黒く透き通り、自身とは異なる色彩。手に入れたくとも手が届かない黒の色。
リクトの一言一言に惑わされ、揺らぐ自身の弱い部分が憎たらしく、またありもしない愛情に誘惑されてる飢えた意地汚い自身に嫌気がさす。
「っん、ぁっや」
いつの間にか、指は一本、二本と増やされていき、先ほどまで襲われた違和感すら感じ取れないほど体は落ちていく。
スズヤは意識が朦朧とする中、必死に蹴り飛ばす言葉を探すが、見当たらない。
嫌、頭の回転が速い彼ならば見当たらない訳が無い。見て見ぬ振り、見つけようとしないだけなのかもしれない。あぁ、なんて醜いのだろうと悔やんでも、戦意喪失した彼に動く意思が無いのだから。
「……ぁんた、なんなんだ……よ」
ポツリと本音が漏れてしまい、それらを口の中に戻す行動など見せず、吐き出された言葉と一緒に大粒の雨が左頬を滴る。
それは光により受けた涙でも、快楽に溺れた涙でも無く、十五年間誰にも見せず、枯れ果てたはずの苦しみや痛みによる涙。出し続けたアラームは誰にも気付かれず、いつの間にかお面で姿を眩ました彼の本当の姿。
スズヤは「俺には」と残されたありったけの声で叫んでみたが、その口は乱暴に塞がれる。
塞がれた口から甘い声を鳴らしながら、無意識にリクトの舌を受け入れていた。それは頭が上手く動いていないからなのか、それとも人間の本能なのか。
いやらしく糸を引きながら口を離されれば、「俺の今までの言葉を否定するなら、許さなねーぞ」耳元で先の未来を予知した彼は囁く。
「俺は」の後の言葉。
それは何時の日か、汚れた空き教室の片隅で放った刃。そして、今回の事件の発端となる元凶の言葉。
全ての始まりはここから出発したのだろうか。
『俺には、家族はいない』
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