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「時々、あいつ雰囲気が恐ろしく変貌するんだよな」
犬の食べ残しが目立つ空いた席を見つめ、マナブは先ほどのアスカに付け足すように語り出す。
それは、スズヤの知らない数ヶ月の間に起きた出来事の話しであろうか。
「俺らがなんで虎男に目つけられたと思う?」
「兄貴が喧嘩売った」
「すぐ俺のせいにするな。 後、即答すんじゃねーよ」
一番最初に出てきた答えが自身の兄なのは、普段の行いが少しばかり悪いから。正直なところそれ以外思い当たる節も無く、あまり考え難いが話の流れに乗るように問題の答えを解いてみた。
「アスカが喧嘩売った」
アスカについて語っている今、なにかしら彼が関わりを持つ質問に違いは無いであろう。だが、彼が関わっていると隅に置いていても、導く物が無ければ答えなど提出できない。
だたからこそ、人懐こいアスカと比例しない答えを出してみたのだが「正解」とマナブからはなまるを貰えれば一つ眉をひそめて見せた。
「虎男見た瞬間、殺意むき出しで殴り込んだんだよ」
「殴り込むの次元じゃねーだろ。ありゃ、殺すか殺さないかの次元だ」
「どちらにしても俺には想像できない」
想像はできないが、それはスズヤの知る"普段のアスカでは"の話し。
先ほど見せたアスカの顔を毎日見ていれば、想像など容易いであろう。たが、彼は裏に隠した恐ろしい一面をはじめて見せたのだ。
どちらが本当のアスカで、どちらが偽者か。
あるいはどちらも本当のアスカなのか。
眉をひそめるスズヤの中で、妙に糸が引っかかる。我ながら考え過ぎだとは思ってはいるが、彼は用心深い人間故に一度出てきた違和感を見捨てる事はできない。
スズヤはここ最近の出来事が巻き戻されるように脳内に上映される。
「虎男に見せた殺意。マナブが襲われた時に見せた慌てよう。 養子の弟、ニックネーム、生き別れた兄に対する殺意……」
ぽつりぽつりと消えそうな声で呟き、現在の状況を一つずつ整理していく彼に対して何か思ったのか、追いかけるように一人の男は眉をひそめ、一人の男は呪文のようなその言葉に意味が伝わらず、目を丸くする。
「殺したいほど愛してるか……」
「おい、スズヤどーした」
「偶然だといいけど」
それを一言に席を立ち上がれば、以心伝心するように「アスカに昼ご飯までには戻るように伝えておいてね」なんて一見母親のような一言をマナブが与える。
「捕まえられたら伝えておく」
「後、きちんとサングラスと帽子と日焼け止めと日傘は忘れないように」
「なんで外に出る前提。後、あんたは母さんかよ」
ふっと彼は笑いを出せば、「できの悪い子供を持つと母さん大変だわ」なんてふざけてみせるで呆れのため息がこぼれる。
このおふざけも、行動を共にすることで見慣れた景色。悪く言えば阿保、良く言えば空気を和ませる言葉。アスカに対しても同じ言葉を与えられるが、アスカとはまた別な意味となろう。
そんな彼に、今更何か言う気にもなれず、スズヤは「外に出られてたら体的に見つけるの無理だろうけど」と要らぬ一言を置き土産に出入り口に足を動かした。
「昔のスズヤなら見捨てるだろうに、本当変わったよな」
「まぁな」
「なんでお前が誇らし気なんだよ」
男二人きりとなったそこで語られたのは変わりつつある白色の少年のお話し。親のように消えゆく彼の姿を後ろから見つめ、また消えることの無い悪友二人の会話は互いに彼のために尽くしてきた故、彼を見守ってきたからできる事であろう。
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