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始まりがこれですか、
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こしあんの饅頭
それは、
俺が職場の土産で最も苦手とするものだ。
あれは半年前のことであったか。
俺がデスクで開封した饅頭が、
PCのキーボードの上を点々と跳ね、手掛けていた未完成のデータをオールクラッシュした事があった…
あの頭も画面も真っ白になる切なさは、
今でも忘れられない。
それはPCが馬鹿なせいなのか、
俺に転がるような菓子を配った社員のせいなのか、「美味しいわよ」と至近距離で開封を促してきたババア(上司)のせいなのか。
それとも、
未完成の仕事を放置して、土産を食べようとした俺のせい…なのか?
いやいや。ねーよ。あれは饅頭が悪い。
…てなわけで。
俺にその一連を思い起こさせるこしあん饅頭を渡すことは、極めてNGなのである。
が……
残念なことに、その事実を知るのは、
この社内でただ一人。俺だけだった。
「…これって、誰からのお土産でしたっけ?」
『えぇ? いや、だから…
桐嶋さんでしょ』
私に振らないでよ、と小声で言ってから足早に去っていく社員。
その人が言葉にした名を、頭の中でゆっくり繰り返した。いやはや、ぼんやり聞いたものだから、すぐに誰だかわからんのだ。
桐嶋… 桐嶋… 桐嶋…
俺は、おずおずと口の中にしまい込んだ柔らかいこしあんを、思い切り噛み締めた。
なーに、耳馴染みのある名前さ。…
( あんのクソ上司っ…!!!! )
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