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※このページはほぼ俺の愚痴です
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桐嶋寛人(キリシマ ヒロト)という男は。
一言でさくっと説明してしまうならば、
親に貰った名前だけがおおらかな人だ。
もう一言加えるならば、俺の上司。
四文字で伝えるならば、やなやつ。
女性の喜ぶ紹介をするならば、
ビシッとセットされた黒髪、キリリとした目元と泣きぼくろが特徴的な、営業部のエース。……なんて、癪だけどな。
つまりは、顔だけ見れば整っているのだ。腹の立つことに。
何にしろ、
こうやって彼を苦手だと思っているのは、俺だけじゃない。この部のほぼ全員だ。
もしくは関わりのある他の部も含んで。
何がって、怖い、うるさい。
…だけじゃ、ない。
『効率が悪い』だの、
『営業マンとしての自覚はあるのか』だの、『見てるとイライラする』だの。
知ったことか…!!!!
注意とは言えぬ勝手な事まで、グチグチ延々と聞かされるのだ。
逆に仕事がはかどらない、ちょっと黙って欲しい。それを目で訴えるとまた怒られる。
…繰り返し…
典型的な鬼上司だ。
良くいるやつだ。されどもここまでテンプレートな方にお会いしたのは初めてです。
「桜庭ぁッッ!!」
…ハイ。
噂をすればご指名入りました。
桐嶋さんの声を聞いた社員たちが、目配せで同情の色を見せてくる。
そんな人生終わったみたいな顔しなくても、怒られるのは俺なのに。
おもむろに立ち上がると、自分のデスクを後にする。
俺、桜庭樹(サクラバイツキ)、
逝ってまいります。
ーーーーーーーーーー
「こんな事もまともに出来ねーのか!!
だからいつまで経ってもダメなんだよ、何学んでんだ、一からやり直せ!!」
飛び込んでくる怒声が、重なりゆく罵声が、俺の耳を、右から左へと通過する。
いや、
いつも始まりは反省するんだ。
流石に特に何もないのにキレるほどにはヒステリックな人じゃないし、怒られるって事は俺がミスしてるんだから。
ただ、段々一人で盛り上がって、話が脱線していくのだけは勘弁して欲しいのだ。
…ほぼ毎度のことなんだけど。
「大体お前は、いちいち態度が女々しいんだよ!!女みてーなのは名前だけにしとけ!!」
そして毎度のこと俺が密かにキレているフレーズがこれだ。
だって関係なくね?
何が女みたいだよ、いいじゃん、桜庭樹なんて、自然でまとめちゃって可愛いじゃん。超今どきだよ。
この言葉をきっかけに、俺の怒りは腹の底からふつふつ湧き上がる。
俺だって、一応上司という目上のお方の手前、不本意ながら仕方な~く大人し~くしてんだよ。
ほんとは極めつけの性格の悪さだけど、社内では上にも下にも物腰柔らかな対応してんだよ。
おかげで社員一の爽やかイケメンキャラ確率したよ。
どうだざまぁみろ。
「…おい…おい!!
聞いてんのか」
「ぁ、は、はいっ」
しまった、つい聞き流し過ぎた…!
「……や、ハイじゃなくて。
もういいから戻れっつってんだよ」
しまった…もう、終わってた。
決して仕事が嫌いとかダルいとかやる気がないとか、そんなわけではない。
俺は、そんなやりがいのない仕事を、たらたらと半年以上も勤める気はない。
ただこの男が、どうにも嫌いなだけなのだ。
俺にこしあん饅頭を与えたって、
その時点で罪深い。
いくら個人業績が良かろうが、
部長の信頼が厚かろうが、
密かに女性社員にモテていようが、
こんなパワハラ上司を好きにさせてたまるか!!
……なーんてな。
思うだけは自由、思うだけは自由。
俺の桐嶋さんへの不満は、
いつまで経っても、
日々胸の内に、掃き溜めのように蓄積されるだけだった。
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