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可愛い部下の素朴な疑問です
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そろそろ替えの必要な蛍光灯が何度か点滅し、薄暗いオフィスは眩しいほどの明るみに変わった。
すぐにガタッと音がして、
俺は端のデスクに目を見張る。
犯人は俺を見て、慌ててPCを閉じた。
そんな薄型、思い切り閉めたら潰れるぞと言わんばかりの勢いで。
犯人はうっすらと蒸気した顔で、信じられないというようにこっちを見て固まっている。
だが、信じられないのは俺の方である。
犯人のデスクの下で、カチャカチャッと、
ベルトの擦れ合う音がした。
……おいおい。マジかよ。
予想外の人物であるが、面白い程期待通りとも言える。
そうだったらいいなと思っていた、妄想の中で密かに馬鹿にしていた奴である。
そう。
その犯人とは、
黒髪に泣きぼくろが特徴的な、部長お墨付きの営業部のエースであった。
俺は口元がにやつき出すのを堪えて、
少し驚いたような演技をした後、
「桐嶋さん…!
遅くまでお疲れ様です。
いや~ちょっと俺、
忘れ物しちゃいまして…」
な~んて、敢えて気づいてない振りかましてやった。
だってその方が面白いだろ。
変な汗浮かべちゃって、
向こうがどう動くか見ものだな…
桐嶋は、思ったより過剰な反応は見せなかったが、焦っているのが目に見えてわかった。
俺からふっと顔をそらし、左手だけで、散らばった資料を集め出す。
ペンを落っことしたりして、それで何事もないように振舞っているつもりか。
デスクの下は大惨事なのではないか。
右手の方はどこへ行かれたのだろうか。
俺はそんな様子をじろじろ見ながら、
手で口元を隠し、肩を震わすまいと必死だった。
確定したから堂々と言ってやる。
あの鬼の桐嶋が、
薄暗いオフィスで一人、
高そうな薄型PCの画面を前に、
自慰していたのだ、ってことを。
「…おい。忘れもんは」
突っ立っている俺に、心底うざったそうな顔を向ける。
そりゃそうだ。
一刻も早く帰って欲しいんだろう。
俺に知られたらって、ハラハラしてるんだろうか。スーツも着崩した状態で、何とも哀れなことだ。
だが俺は、悪戯心に逆らわざるを得なかった。
このどうしようもない上司を前に、黙ってオフィスを立ち去ることは出来なかったのだ。
「…桐嶋さん。もしかして、どこか具合でも悪いんじゃ…」
「…あぁ?! 悪くない!」
俺が歩み寄る度、桐嶋が焦りを増していく。
こんな面白いことがあるか。
「本当に? 顔赤いです」
「や、だから、
何ともねーって…」
この時の桐島といえば、
とにもかくにも俺から逃れるために、椅子を立ちたいことだろう。
それが出来ない理由を俺は知ってる。
しきりに左腕の銀時計をいじり、目を泳がせている理由も。
……待って
これちょっと、楽し過ぎないか。
俺はとうとう桐島の目の前に立つ。
得意の営業スマイルを貼り付けながら、
身体の前で手を組んで、
桐嶋の警戒心を煽る。
なぁに、可愛い部下がちょっと疑問に思うことを問うだけさ。
出来るだけいつもと変わらない調子で言おうとしたんだが、それだけは大失敗で。
乾いた笑い混じりの、冷淡な声だった。
自分でも驚くような。
「ねぇ、桐嶋さん…
さっきまで、
何してらっしゃったんです?」
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