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※甘え上手な部下にただ翻弄される上司
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〜桐島side〜
狂った。
ついに狂いやがった。
…俺 が。
7時30分。…
俺は、桜庭からかかってきた、この上なく迷惑な電話の相手を終えた。
終えたというかは強制終了だ。
思いきりブチ切ってしまった。
特に頭に来たわけでも、めちゃくちゃ嫌だったわけでもない。が、
あいつのあの妙な声使いを聞くのに、何となく耐えきれなくなった。
「なんで…なんでだ…?」
通話を切った俺はもはや放心状態で、
中途半端な時間に起こされたもんだから、その後眠ることも出来ず、
ただただ1人、ベッドの上で頭を抱えていた。
自分で言うことでもないし、
言葉にするだけで気味が悪いが…
今あの桜庭樹は、
俺にベタ惚れである。
でもってそんなことは既に認識済みで、
ましてや「好き」なんて文句には「あ、そう」と返せるくらいの心の余裕というか、上手い流し方というか。
その程度のものは備えていた…筈だった。
なのに… …
「なんだあれ…最ッ悪だ…
絶対誤解しか生まねぇだろ」
正直、後半何喋ったかをほぼ全く覚えていない。
奴の気色悪い甘台詞の為に、一体どんだけテンパってたんだ俺は。
というか何故ああも焦らなきゃならねぇんだ、この俺が。
これじゃ気色悪いのはこっちじゃねーか。
桜庭とは、12時間後にはまた顔合わせなきゃならないんだぞ……無理。絶対無理。
気まずいというか、普通に話せる気がしない。
寧ろ怒鳴ってしまいそうだ。
「くっそ…
あんな言葉は、女に使え…」
それとも女は好きにならないか。
ゴツッと壁に頭をもたげて目を瞑ると、
思い浮かぶのはやはりあいつの、締まりのない顔だ。
目鼻立ちは整ってるし、
顔 面 だ け 見れば、
それなりに良いと思うんだが…
女にもそこそこ人気ある癖に、
あれで俺相手に迫ってくるとか…なんかもう、色々馬鹿じゃねーの?
それに。
なんで…なんで、俺なんだよ。
一番ビビってたくせに。
上司に俺の事苦手だって言ってたくせに。
『大好きです』
『早く会いたいです‥‥』
やたら糖度の高い甘い言葉が、まだ左耳に残る。
それが頭で何度も何度も復唱されて、
くどいって程に俺を掻き乱してくる。
ぶわっと、顔に血が集まった。
おかしい。
普段なら鳥肌立てて気持ち悪がるところじゃないか。でもってそれがフツーだろ。
いつかあんな態度で接してくるのを飽きさせてやるために、
冷たくあしらうか嫌味の一つでも返してやって、奴を拗ねさせるのが俺だろ。
それなのに・・・満更でもないとかふざけんな!!
「…俺も、まだ熱でも残ってるんじゃないか…?」
… … …
あの会話のほんの一瞬、
確かに奴を否定しきれない俺がいた。
…気が、した。
「あーやめだやめだ。
あんなの悪い夢だ…」
ふわふわするような妙な感覚を押し殺し、
重い体を無理やり起こして、
冷たい水で顔を洗い、
会社へ向かう支度を始める。
そんな8時ちょっと前の出来事。
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