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あ、消臭剤まくの忘れた
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部屋に入った桐嶋さんは、
非常に不満気というか、つまらなそうな顔をしていた。
「なんだ。すげぇ散らかってるって言うから、もっとゴミ屋敷なのかと思ってたけどな」
「は、はは…」
ふらふらになりながら必死で掃除しましたなんて言えない…
そのせいで見事に熱が悪化しました、なんて言えない。
残念そうにするくらいなら、普通に片付いてたことをもっと喜んで欲しいところだ。
…とりあえず、
人が来た時はちゃんとお茶とか出すよな。しかも上司なわけだし、これ多分本来ならもっと気遣わなきゃいかないとこだよな。
「桐嶋さん、粗茶でもいいで……ぅおわッ!!」
キッチンに向かおうとすると、勢い良く布団の上になぎ倒された。
「お前は寝てろ。熱すげぇぞ…
何の為に俺が来たと思ってんだよ」
呆れた顔で布団を見下ろしてくる桐嶋さん。
俺はきょとんと首を傾げた。
「え…桐嶋さんて、
お酒のみに俺ん家来られたんですよね?」
「は?ふざけんな。
…いや、そりゃ酒は買ってきたけど…
違うだろ。そうじゃねーだろ」
一瞬、マジかこいつ、みたいな顔をした後、
照れくさそうに頭を掻く。
そこまで鈍感なわけでもない俺は、その様子を見てにやりと口角を上げた。
「へぇ…律儀な方ですねぇ〜」
「な、何がッ」
「桐嶋さん、俺がこの前介抱してあげたから、その借り返しに来たんでしょ」
俺が指摘すると、桐嶋さんはふいっと目を逸らした。…無言は肯定ってね。
流石、モテる男はやる事が違うぜ。
会社から近いわけでもない部下の家に、仕事を早く切り上げてでも看病しに来てくれるなんて。
俺に用事があるとはいえ…
毛嫌いしてる、しかも部下相手に、
普通そんな良心的なこと出来ないでしょ。
始めは根性腐った奴だなぁと思ったけど、
やっぱこの人は何か持ってる。
仕事へのカリスマとかじゃなくて、
もっと人間性のあるもの。
「うっ…
あんた…マジ、いい人ですよっ…
今この瞬間、会えて良かったぁ…」
「おい泣くなッ
一体どんだけ寂しかったんだよ。
…つーかお前、そんな奴だったっけ」
弱った俺にドン引いてくる所はともかく、
桐嶋さんは優しい人だ。
本当は優しかった鬼上司ってタイトルで一冊作り上げてしまいそうな程感動してる。
やっぱ好きだ。
この人にはもう、好きの二文字しかない。
「まぁいい、とにかく!
熱出してまで無駄な気遣いすんな。今は俺の事を…なんだ。お父さんだと思え!」
「こんなお父さん気抜けねーよ!!」
布団の前で仁王立ちする桐嶋さん。
それを真顔で言った馬鹿っぽさには笑うけど、
好きな人をお父さんだと思って接するって、
よく考えたらめちゃくちゃ複雑なんですけど。
…ほんとに自覚ないなこの人。
俺はほとほと呆れつつ、
脇に置いてあった彼が買ってきたというビニール袋を覗き見た。
うはーストロング系ばっかり。 …
それに何缶あるんだ。あれ全部飲む気か。
見た目に酒豪が似合うのは認める。
だが、そこは予想を裏切って、1本飲んだらヘロヘロになっちゃうくらいが良かった。
あー酔いどれた所が見たかったのに… … …
「さ く ら ば」
「うわっ!」
ぼーっとしていると、額に突然冷たい物を押し当てられる。
頼んでおいた冷えピタだ。
「あ、ありがとうございます…」
「ん。」
て、手でおでこペチってされた…
ああぁ火照った身体にひやりと冷たい、
涼やか快感プライスレス。
「ははは… 熱上がったっぽい。
なんか、楽しくなってきました」
「いや、今頭冷やしてんだけど…
大丈夫かお前」
今宵はこの人と世界一幸せ、
ホットでクールな夜を過ごすぜ。
先に寝ないし寝かさない、
うるとら はっぴー ないとだ!! (高熱)
ーーーーーーーーーーーーーー
「よし。すぐ終わるから寝たままでいい。
仕事の話だ」
・・・
「…オヤスミナサイ」
「おい」
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