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まぁ実は駄犬なんだけど
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そんな事があった日から、
もう数日経つ。
アル中になっただなんて悪い思い出だけど…
あの後会社についた時、
仲直りしたことに明海さんがすごく喜んでくれたり、俺達が再び共に出社して来た事に噂する社員が居たり。
何よりも通勤中の桐嶋さんの謎発言が、鮮明な記憶となって残っている。
…あれから桐嶋さんは、更にまた優しくなった。
と同時に、
何故だか自然と、彼に関わることも減ってしまった。
理由は良くわからないが…
食事を一緒しようにも予定が合わなかったり、
昼休憩ですら桐嶋さんがふらりと出掛けてしまって捕まえられなかったり。
ミスしても怒られなかったり、それでも機嫌が悪い日はちょっと怒られたり。
正直仕事中も言葉を交わす日の方が少なくなって来たし、俺との移動中より取引先での方が生き生きして見えるし、
笑いかけたら目逸らされるし……ってまぁ、これは通常運転なんだけど。
なんというか… これってもしかして…
というか確実に… …
「大変だ…
俺、避けられてる!!」
「うるさいよ桜庭君~
近頃はずいぶんとご乱心だね~」
12時半。
絶賛ランチタイム中。
俺は、コンビニで奇跡的に売れ残っていたツナマヨおにぎりを思い余って握り潰しながら、
明海さんに事情を打ち明けていた。
先日の件があってから、俺の明海さんへの信頼度は急上昇だ。
お悩み相談なら絶対この人、今や俺の女神…いや、仏様なのである。
「まぁた桐嶋さん?
この前喧嘩したばかりじゃん…
なに、君らは夫婦なの? これ痴話喧嘩なの?
…懲りないね~」
「いや違うけど喧嘩じゃないけどそもそも喧嘩する程喋ってすらないけど…」
デスクに突っ伏する俺。
明海さんは手のひらサイズの手作り弁当を頬張りながら、何やら真剣な顔でこちらを見てくる。
そして、その女子力の塊を一度脇に置いてから、
バッサリと言い放った。
「もう、あれかな。
鬱陶しがられてるんじゃないかな」
「うわあストレート」
鬱陶しいの文字は、俺の胸に見事グッサリと刺さってしまったようだ。
明海さんは悪びれもせずけらけら笑っていたが。
「だってさ…
桜庭君ってなんか最近、あの人の犬みたいだよ?
言われてもないのに、コーヒー入れたり好みの銘柄の煙草買ってきたり…
…ぁ、実は脅されてる? パワハラ未だ健在?」
「や、あの、
違います違います」
実は前まで脅してたのは俺の方なんだよ〜
…なんて言えない。
煙草やコーヒーはもはや癖というか何かするついでというか…大して深い意味はないんだけど。
しかし、
明海さんの言葉を聞くと、妙に納得させられる部分もあった。
旗から見れば、今やまるで、
俺は桐嶋さんに良いように扱われてるかのような存在なのだ。忠犬なのだ。ハチ公なのだ。
それでも、好きだ。
この気持ちだけは依然として変わらない。
いくら振り向いて貰えなくても、冷たく突っぱねられても、諦められない。
だから…仕方ないじゃないか。
「ここまで来れば…
もう、犬でもいいんだけどな…」
「………桜庭…君?」
向かい側から酷く軽蔑した眼差しを受け、
俺はハッと我にかえった。
まずい。
ついつい、隠しておくべき胸の内が声に…!!
「あー…お、俺…
ちょっと外の空気でも吸いに行こうかなーぁ」
俺はおもむろに立ち上がると、
呆然とする明海さんと潰れたおにぎりを置いて、
足早にオフィスを後にした。
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