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兄弟ってのは色々あるもんだ
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会社に着いた途端、
俺はその異変に気づいた。
まだこの時間に出勤している人は少ないのに、階段下に居ても聞こえる、
賑やかな誰かの声。
社員らしき人が、オフィス前で話し合っているように思われる。
「いつの間にこんな成長しやがって…この前まで小学生だったじゃねーか」
俺がそろそろと階段を登っている間にも、
楽しそうな笑いが響く。
この声は……桐嶋さん?
俺は思わず眉をひそめた。
桐嶋さんがこの時間にもう出社しているだと。珍しい事もあるもんだ。
…珍しいというか、もろ怪しい。
あの難しい人が、一体誰とこんなに会話を弾ませてるというのだ。
この間まで小学生だった奴って誰なんだ。
どうしても募る嫉妬の思いを隠しながら、足を早めた。
上りきった先で、
当然俺に気づいた桐嶋さんと、話し相手の人物が振り返る。
あからさまに「うわ」と嫌そうな顔をする桐嶋さんに対し、不思議そうにこちらを見つめる小柄な男の子と、
バッチリ目が合った。
ふわふわアッシュヘアにどんぐり目、
耳にいくつかピアスを飾り、
ちょっとした小物にもこだわった服装は、いかにも若者といった感じ。
ちょっと痩せ気味だが、
表情は嬉々としどこか垢抜けていて、今時の男子を連想させる。
でもってこの子が一体桐嶋さんの何なのか、
頭を悩ませ推察していると、
少年は突然思い出したように「あぁ!」と声を上げ、
声を上げたかと思うとズンズンこちらに近づいてきた。
「君…寛人兄さんが良く言ってる桜庭くんじゃね?」
「えっ。
ぁ、はい…
桜庭ですけど」
ひ…寛人兄さん…?
丸い目が戸惑う俺を捕らえて、
きらきらと輝いている。
その後ろで、桐嶋さんが更に顔を引き攣らせるのが見えた。
「ぉ、おい。
もうすぐ始業時間だから、そろそろ…」
「いいじゃん、ちょっとだけ!
一度話してみたかったんだ~!」
にこにこ笑顔を向ける少年。
俺はその眩しさに眩み、ちょっと引き気味になりつつ尋ねる。
「き、君は…誰なのかな?」
「あー…いや、桜庭。
そいつは俺の…
…一番下の、 弟だ」
若干警戒している俺に気づいたのか、疑っている内容を撤回するがごとく、
すかさず答える桐嶋さん。
俺はその言葉を聞き、
良く理解しないうちにもう一度少年の顔を見て、その後も何度か桐嶋さんと見比べた。
なに、今この人何て言った…?
「ぇ…ぉ、おと…えっ…」
・
・
・
ええええええええええ!?!?
「桐嶋優人(ユウト)!
よろしくお願いしまっす!!」
バシッと手を握り、激しくハンドシェイクされる俺。
元気の良すぎる末っ子君にされるがままの俺は、
今とても混乱していた。
ゆ、優人くんんん!?
嘘だろ…
桐嶋さんが5人兄弟の長男という事実は、結構前に発覚しているけども。
その時だって驚いたってのに、
このチャラめの今時男子が、
あの桐嶋寛人の弟4号?
それは、実に信じられない話である。
びっくり度も2倍である。
いや。いやいやいやいや。
似てない、似なさ過ぎるよ…!!
橋の下の拾い子か疑うレヴェルに似てないよ!!
その顔立ちを取っても体格を取っても、
同じ腹から産まれたとは思えないよ!!
…
尚も元気の良いハンドシェイクに勤しむ優人君。
俺が「マジなのか」という顔を見せると、
桐嶋さんは苦い顔で「マジなんです」というように頷いた。
どうやら今日俺は、
今まで出会った史上最強に、
遺伝子の受け継ぎが極端な兄弟と出会ってしまったようだ。
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