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「おい桜庭…
そ…そろそろ離れねぇか…」
数日で正月を控えた真冬ともなれば、外は凍えるように寒い。
対照的に、
充分にエアコンの効いた桐嶋さんの部屋は、
こうして抱き合っているとむしろ暑いほどだった。
俺は肩に頭を任せながら、
ゆっくりと熱い息を吐いた。
「ケチだなぁ……もうちょっと、
余韻に浸らせてくれたって…」
「なんか気まずいんだよ!
…ひっついたまま沈黙すんなッ」
居心地悪そうな桐嶋さんは、俺に腕を回されたまますっかり参っている。
恥ずかしがってるこの人を永遠に眺めてるのも良いし、
第一これは大告白した後の桐嶋さんを逃がさない為の抱擁だし、
かくいう俺も離れるつもりはまぁないが……
流石にずっとこうしているわけにもいかないか。
なにせこの状態で今に至るまで、
かれこれ数十分は経つのだ。
「…ねぇ。
俺達の始まりが何だったか、覚えてます?」
「お前ここでその話題を持ってくるのか?」
何の気なしに話を振った俺に、桐嶋さんは酷く苦々しい顔をした。
そういやこの人にとっては黒歴史だったな。
…詳しくは十数ページに戻ってみてくれ。
「あはは…いやぁ~楽しかったなぁ~
あれぞまさしく、下剋上でしたね!」
「……なぁこのままその腰へし折ってやろうか」
桐嶋さんの腕に力が込められたところで、俺は慌てて「嘘です冗談です」とフォローを入れた。
俺と桐嶋さんの出会いはもちろん、お互いが深く関わるようになった原因も最悪のものだ。
今日までの俺達に、甘いエピソードなんてあったもんじゃない。
「ほんと…
ここまでこれて、すっげぇ幸せですよ…」
「ふん、言っとくがな。
俺は別にお前と恋仲になったからって…何も変わってやるつもりはねぇからな」
顔も心も緩みきった様子の俺を嗜めるように、桐嶋さんはツンとした態度を取ってくる。
本来なら俺もこの人も、
持つべきものは『彼氏』ではなく『彼女』だ。
桐嶋さんが言うのは、
優しくしてやらないぞという意味なのか、
女の子のように可愛がられる存在にならないことを気にしての言葉なのか…
俺はそんなつまらないことをしばらく考えてから、また笑顔で抱きついた。
「いいですよ、なんでも!
俺はいつもの桐嶋さんが好きだから…」
「…ぉ、俺は…
お前のそういうとこが嫌いなんだよ」
嫌いだ、なんて冷たいこと言う桐嶋さんは、その言葉にはどうにも不似合いな顔をしていて、
思わず笑ってしまった。
「…なんだよ、笑うな!」
「あーーもう可愛い! いつからそんなに可愛い人になったんですか!」
「はぁ?!
馬鹿、重…ッ! おい!
お前痩せてる癖に重いんだよ!」
夜中に笑いながらじゃれ合う25歳と27歳(でもって上司と部下)。
やがて桐嶋さんは俺を支えるのを放棄して、そのままドサリと床に倒れ込んだ。
「あー疲れた…
…はは、でっけぇ犬」
そして寝転がったまま腕を伸ばすと、くしゃくしゃ頭を撫でてくる。
その優しい手を感じながら、
俺は自分の中で、
先程からとある感情が昂り出していることに、薄々と気づいていた。
「あの…」
かすかな躊躇いを振り切り、口を開く。
「………桐嶋さん。俺…
今夜は、もっと自惚れたい気分です…」
撫でられていた手を取り、床にそっと押さえつける。
真剣な目で見下ろすと、
桐嶋さんは一瞬だけ驚いて、
すぐに察したのか、怪しげに目を細めた。
「…何…を、する気だ?」
しばらくすると、
緊張した声が確認を取ってくる。
俺は「いけるか」「ダメか」の判断しきれぬ狭間で揺れていたが、この際だ。
おそるおそるでも、
素直な気持ちを打ち明けることにした。
「き、桐嶋さんと…
そういうことが……したい、です」
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すいません、
携帯潰れてましたm(__)m←
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