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甘やかし上手
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それから1時間後…
床の拭き掃除を終え、
文句を吐きにやって来たジジイ(ご近所)に平謝りし、酒臭いと言われたもので風呂に入った俺達は今、
死んだように倒れ込んだ寝床に至る。
「なんか…疲れましたね」
「全くだ…つか、
もう寝るから話しかけんな」
シーツの皺を足で蹴って伸ばし、うつ伏せになって枕に顔を埋める桐嶋さん。
あ、これ完全に寝る体勢だ。
今からは俺を空気のように扱うつもりだ。
「ちょっと待ってください!
俺の寝るとこない!」
必死に訴えるのに対し、桐嶋さんは「るせぇな」と気怠そうな声であしらってくる。
「…よく考えたら今他の布団クリーニング出してんだよ。ソファで寝ろソファで」
ええぇ……
いやまぁ、俺はこの人とは違って、
場所さえあればどこでも眠れる体質だけど。
この前家にお邪魔した時は
俺がてきとーな所で寝ようとしたら止めた癖に…
逆に扱いが酷くなってるってどういうことだ。
「桐嶋さぁん…」
布団も被らず、
ついには全く反応が無くなってしまった。
本格的に寝てしまったのだろうか。…いや、早くね?
仕事が早けりゃ酒のピッチも、夢の中へ行くのも早いってか。
疲れ切って寧ろ眠くない上寝床もない俺は、
既に諦めモードだ。
「おいこらー…起きろー…」
ひたすら桐嶋さんにちょっかいをかけていた指に、背筋をツーと謎る動きを加えながら
たまに何気なく、
「そんな無防備だと、襲っちゃうぞー…」
とか言って1人でなかなかリスクの高い遊びを楽しんでいると、
突然凄い力で腕を引かれ、同じ布団の中へ巻き込まれた。
「わっ…ちょ、なに!」
「うるせぇっつってんだ。
…ソファが嫌なら、ここで寝ろ」
2人分の体重を乗せたベッドのスプリングがギシリと軋む。
いきなりのことで面食らうも、
強い腕に抱き寄せられ、そのまま俺は、
たくましい体の餌食となった。
「きっ、桐嶋さん?
…このまま寝るんですか?」
「抱き枕が喋るんじゃねぇ…」
いつの間に抱き枕にされたの俺。
同じベッドで寝るというのは、サイズ的には大した問題は無かった。が…
何この状態、
どういう風の吹き回し…?!
布団の中で密着した体が、みるみる熱くなっていく。心臓に至っては、今世紀最大の活動力を見せているようだ。
同じ布団、桐嶋さんに抱きつかれた俺が、果たして落ち着いた睡眠を確保出来るのか。
…いや出来ねぇ…ッ!!
「あー無理無理、桐嶋さん…
自分の貞操を守るためにも、離れてください」
いつも手は冷たいけど、こうして引っ付くと体温自体は暖かいって、
これ今日の新しい発見。
風呂上りのめちゃくちゃ良い匂い残ってるし、
こんな至近距離、手出し不可で永遠この人の息遣い聞かされるとか……
…一体何の拷問だよ。
「桜庭」
為すすべもなく途方に暮れていると、
突然耳元で心地よい低音が名前を呼んだ。
「…ふぇ!? な、なんすか!?」
緊張を隠せないまま返事をする俺に、
今度はからかうような笑い声が聞こえる。
こういうのも、
無自覚だろうからこそタチが悪い。
「面白ぇ奴…」
やがて桐嶋さんは、強く抱きしめる腕から力を抜き、くしゃっと頭を撫でてきた。
…今日もう一つわかったことだが、
どうやら桐嶋さんは俺を犬みたいに扱うのが好きだ。
そう思うと複雑だが、これがまた嫌じゃないから仕方ない。
この落ち着いた声も優しい手つきも、甘やかされてるみたいで、妙に安心するのだ。
「………お前には、
色々譲歩してやるつもりだよ。
…だから休みまで待て。いいな」
さらさらと髪を掻き分けながら呟かれた言葉。
「え……それって…」
俺はその意味を考えて、
ぶわっと赤面せざるを得なかった。
勘違いじゃなかったら、
それはつまり…
俺が桐嶋さんを好きにしてもいいってことだ。
こんなにもさらりと、
その許可を与えてくれたのだ。
確認を取るように目を合わせると、桐嶋さんは眠そうな顔でゆっくり頷く。
「その代わり。
次の日身体潰れたら、ちゃんと看病しろよ」
「し、ししますします!」
ふっと浮かべられた優しい笑みにつられて頬を緩める俺。
ああ…やっぱり、こういう所はしっかりきっちり見かけ通りの男前じゃないか。
高いプライドか邪魔して、大事な時に限って渋ったりもするけど、
俺の見る目に間違いはなかった。
「やばい嬉しい、
桐嶋さん大好き」
「知ってる…
もう寝ろ、また寝坊すんぞ…」
うとうとと細められた切れ長の目は、まだ僅かにこちらを捕えている。
…もうあと数分で寝るな、これは…
もしかして、
実はもう良くわかってないんじゃないか。
さっきのは寝ぼけて言ったんじゃないか。
そんな不安も持ちつつ、
朝は結局バタバタするだろうからまだ意識のあるうちにと、
今夜最後のキスを落とした。
「おやすみなさい
桐嶋さん…」
「ん…おやすみ」
(・・・って、だから寝れるかぁぁぁぁ!!!!)
その後の俺といえば…
この屈強な腕の中、
またがっしりした胸の上で、
今世紀最強に眠れぬ夜を過ごした。
明日の朝、また寝過ごしてしまわないことを、ただただ祈るばかりであった。
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