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色気などない
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「ほら、バンザイしてください」
「……自分で脱ぐ」
丁度2分くらい前に、湯沸し完了を知らせるチャイムが鳴った。
やむなしといった態度の桐嶋さんを連れ、
洗面所へ来たはいいものの、なかなか裸になるのを渋られているのだ。
…何を今更って感じだけどな。
俺に促され、
そろそろと服に手を伸ばす桐嶋さんは、
気恥ずかしさを誤魔化すような口調で言う。
「つーか!
なんで一緒に入る必要があるんだ、この狭い空間に」
ごもっともだ。
一人暮らしのバスルームに男2人はきついかもな。
「俺達が家の中で出来ることで、
まだしたことないことって何だろうなって考えたんです」
「結果風呂かよ。…ま確かにな」
食事はしたし酒も交わした、一緒に寝るしやる事やるし。
家デートならゲームとか、ジグソーパズルとか良く聞くけど、この人1人で真剣になって打ち込みそうだし。
他に何かあるとしたら、風呂くらいではないだろうか…
「さっさと済ませればいいか」
Tシャツを脱ぎ、スウェットズボンに手を掛けてまた少し躊躇う桐嶋さん。
俺の視線に気づいて、じとっとした目を向けてくる。
「…見んなよ」
「絶対ラフな格好似合わないと思ってたのに、案外様になるもんですね」
…ラフな服ってか俺の部屋着。
「ふん、俺ともなれば何でも似合うんだよ」
さり気なく自意識高めな発言をぶち込んでくる桐嶋さん。
この人たまにこういうこと言うよな…
可愛いけど。
「さぁ、冬の朝風呂は出た時地獄ですよ!」
「なんで入る前から嫌なこと言うんだ…」
鋭い指摘を笑ってはぐらかし、
白い湯気の立つ湯舟にザプンと浸かった。
服を脱いで冷え込んだ身体に、じんわりと熱が巡る。
あぁやっぱり気持ちいい…
風呂好きは日本人の性だな…
… … …
「…あれ。
桐嶋さん入らないんですか?」
うちの風呂は、
浴槽だけ充分な大きさなのが唯一の自慢だ。洗い場はともかく、一緒に浸かるくらいならどうってことない筈。
不思議そうに見つめる俺に、桐嶋さんはサッと目を逸らした。
「い、今から入るところだ」
なんでそんなガチガチなんですか
諦めたようにため息をついて、
恐る恐る足先を沈める桐嶋さん。
両足を底に着けると、やっと微かに緩んだ顔を見せてくれた。
「あったけぇ…」
そのままゆっくり身を落とし、三角座りの体制を取る。
少しだけ触れた肌は、お湯の中とは思えないほど冷たかった。
「うわぁ桐嶋さん、冷え切ってますね…
さっきまで寝てたのに」
そういやこの人、末端冷え症だとかなんとか言ってたな。
手はいつも冷たいし…エッチしてる時以外。
なんか可哀想だな… …
「よし。
足裏マッサージしましょう、
血行良くなりますよ」
「どうしてそうなる」
なんか無駄に緊張しちゃってるみたいだし、俺が足裏と一緒に解してあげようではないか。
不審がる桐嶋さんに構わず、
よっこらせっと利き足を手に持つ。
そして、今日はお休みのはずの、
持ち前の営業スマイルを振舞って差し上げた。
「あ~お客さん、凝ってますね、
これは良く歩いてる証拠ですね~
おいくつですか?」
「んだそれ……27歳です」
ちゃっかり乗ってくれてるし…!!
淵に頬杖をついてされるがままになっている桐嶋さん。てっきり怒ると思ったのに、その優しさには感動だ。
「はは。俺ね、結構ツボ知ってるんですよ。
例えば、ここは胃」
土踏まずの上を親指で押し解す。
特に表情を変えない様子を見ると、胃は健康状態である。良かったね。
「ここが首で……ここが、小腸? 腎臓?リンパ腺?みたいな」
「曖昧過ぎんだろ」
馬鹿にした笑い混じりに、桐嶋さんは余裕の顔を見せている。
まだ本当の恐怖を知らないみたいだな…
笑っていられるのもここまでだぜ…
じっ…とその目を見つめてから、
俺はゆっくりと、
親指を足の中心部分に食い込ませた。
「…ここ。
肝 臓」
「…い゙っ…?! ちょ、ゃっめ…
痛い痛い痛い!」
肩を揺らした桐嶋さんに、バシャッと浴槽の湯が跳ねる。
足を退こうとするのを抑えながら、
前から知ってたけど、やっぱ肝臓悪いな。
大丈夫なのかこの人…長生き出来るのか。
と、心中、心配の色を浮かべていた。
「健康体とは言いかねますね~」
…とは言え、こうも良い反応を示されるとつい加虐心をそそられてしまうもので。
俺はグリグリと強く刺激し続ける。
「いやぁ~煙草の吸いすぎですかね。
それともお酒かな?
接待で飲みすぎなんじゃないですか~?」
「だ、だって飲まされ…
い゙ぃい痛い離せ!!
死ぬ! 死ぬ死ぬ! ひぁあぁッ」
・・・やばい。楽しい。
言っとくけど、
この桐嶋寛人をこんな徹底して虐め倒せるのは俺だけだと思うよ。いやほんとに。
でもって、
ちゃっかり色んな人と飲みに行ってしまう事への嫉妬を含んでいるのは秘密だ。
「くそぉぉごめんなさい、ごめんなさい!!
桜庭ぁッ…!」
悔しがりながら一体何について謝ってるんだ。
泣きそうな表情になってきたところで流石に気の毒になってきて、ぱっと手を離してやれば、
桐嶋さんは背後の壁にぐったりと倒れ込んでしまった。
「ッ はぁぁ……
お前、覚えてろよ…」
「ぁはは。
もっと他のツボもあったんですけどね
生殖器とか」
にこりと悪びれもせず笑う俺に、
疲れきった目を向けて、心底呆れ返っている。
「………いい。
もういいもう要らん。洗う」
そう言って、
ゆっくりと重い身体を起こし、浴槽から逃げて行ってしまった。
「お前許さねぇからな。
マジで痛かったからな」
シャワーを浴びつつギロリとこちらを睨む桐嶋さんに、
俺は悪い笑みを浮かべた。
…俺達のバスタイムはまだまだ続く…
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私も良くこの戦法で、
色んな人の悲鳴を聞いたもんだ。。←
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