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だからそれはつまりそういうあれ
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「あれ? 桜庭君じゃん」
「ぉ、おぉ明海さん!」
はたと合った目。
俺は慌てて即席の愛想笑いを浮べた。
実を言うと、
ここらで明海さんを見かけることは、
そう珍しくもない。
彼女とはまぁ仲が良いし、
比較的家が近いので、一緒に出掛けたことだってあった。
買い物の荷物持ちにされた良い思い出だ。
だ け ど も。
今日は俺は1人ではない。
この状況に鉢合わせて、彼女は一体どう思うんだろう。
休日にわざわざ会社の上司と私服でラーメンデートだなんてそんな、何かの罰ゲームと思うんじゃないのか。
…いや寧ろ、そう勘違いしてくれた方がまだ幸せかもしれない…
「あれ?
ちょっと待って、隣に居るのって桐嶋さん?」
うわぁぁぁぁぁぁぁほらぁぁぁぁぁぁぁ
パッと顔を伏せる桐嶋さん。
置いてあったメニューで顔を隠すけど、
もうバレてるから、気づかれてるから。
ていうかそれは隠れたつもりなのか。
「っそ、そうなんだよね…
成り行きは、ちょっと、うん。
…良くわからないけど」
平静を繕おうとして繕い損ねた俺が、
ぎごちない返事を返す。
ちょっと良くわからない経緯ってなんだよ。
何があったら家もかけ離れた俺達が仲良く食事しなきゃならなくなるんだよ。
…でも。だからって…
実は恋人ですなんて言った日には、
この人絶対会社辞めちゃうからなぁ。
明海さんは箸を口に含みながら、
「ふ〜ん」と俺達を舐め回さんばかりに凝視してくる。
「知らなかった。そんなに仲良かったんだぁ…」
素朴な思いを独り言のように述べる明海さん。
関係は気づかれていないにしても、
今の一瞬で、俺達の印象は随分変わってしまったことだろう。
彼女は続けた。
「でも、なんで…?
それ見たことあるんだけど、桜庭君の服でしょ?
なんで桜庭君の服着た桐嶋さんが、桜庭君と一緒にラーメン食べに来てるの…?
…なんで?」
あくまで純粋な疑問をぶつけ続ける明海さんの言葉が、矢のように降り注ぐ。
痛いところを突いた矢は、見事俺達にグサグサ刺さった。
なんでなんでって、質問責めだなおい。
明海さんって天然というかデリカシーがないというか、こういうとこあるよな…
すっかり参る俺の隣…
彼女の無垢な視線に耐えきれず、
桐嶋さんの顔が微かに赤くなったのが見えた。
「別に大した理由じゃねぇよ。
ちょっと用事があっただけだし、
こ、こいつがラーメン食いてぇって言うから、仕方なくだな… …」
カウンターを挟んでつらつらと言い訳を始める桐嶋さんだが…
苦しい。苦し過ぎる。
用事も何も、俺の家来てした事と言えばセッ〇スだし。
「…桐嶋さん」
ポンと肩に手を置くと、ぎくしゃくした動きで俺の方を向いてくる。
冷や汗を流す桐嶋さんは、俺の顔を見て更に引き攣った。
「もう良いでしょう。
そんな風に言う方が怪しいですって…もう楽になりましょう」
「良いわけねぇだろ、な、何悟り開いたみたいな顔してんだ。諦め早ぇんだよ」
小声で言ってから軽く肘鉄を食らわされる。
そうやって未だ動揺し続けている桐嶋さんの手を、カウンターの下でぎゅっと握った。
「無理ですよ、女の子は騙せないんですから」
「…いや、だからってお前……」
女に嘘は通じない。
これは人並みの恋愛経験を積んだ俺がたった一つ、豪語出来ることだった。
明海さんは人一倍鋭い感性を持っているから尚更だ。
目を泳がせる桐嶋さんを隣に、
俺は覚悟を決めつつその手を握り締めていた。
「大丈夫…
明海さんなら他言はしのがれるって、俺が保証しますから」
「……っ
マジでどうなっても知らねぇからな」
ひそひそと会話を交わす俺達へ、
お向かいの勝気な目は、終始怪訝な視線を運ぶ。
「ねぇ…2人ってどういう関係なの……?」
俺のみ相手に聞いているつもりなのか、
偉くずけずけとした物言いの明海さん。
(き、聞かれた…やはり聞かれた…!!)
ついに核心を突いて投げかけられた疑問に、
やたらと緊張が走る。
やがて、
真剣な目を向けながらスープを啜る彼女に、
同じくスープを飲み干した桐嶋さんが、
容器に箸をピシッと置いて、
ただ一言…
「どうもこうも……
好きに解釈すればいいだろ」
と、真っ赤になりながらも言い放った。
喧しい店内、
きっと他の誰もその言葉を耳にしていない中、
明海さんだけが、
驚いた顔をして口を覆っていた。
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この話において、明海さんポジションはなかなか楽しいと思われる。w
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