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もやもや
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……午後4時頃。
オフィスに帰った俺は、
今朝の始まりよりもドンと増えた業務を目の前にして、うんざりと肩を落としていた。
・
・
・
「皆で手伝うって言ってるじゃん。
それに、桐嶋さんの仕事肩代わりするって言ったの桜庭君でしょー?」
張り切り過ぎたのだと隣で呆れる明海さん。
俺は、その通りだとまた肩を落とす。
「年初は仕事量多いからなぁ……っていうか。桐嶋さん、本当に呼ばれてっちゃったんだ」
車で機嫌を損ねていたのあんまりにも可哀想だったから、俺達で何とか出来ないかって話だったんだけど。
俺が代わった所で自分のものと両方をこなせる筈もなく、
結果皆でちょっとずつやる事になるという。
まったく、恋人なのに情けない…!!
けどこれ、残業しなきゃってどころの量じゃねぇ!!
「あの人もほんと忙しいねー…
給料出るわけでもないのにさ」
「そもそも、なんで桐嶋さんだけ呼ばれなきゃならないんだろ」
他部署への手伝いなら、
大抵ほぼ強制的に全員参加で行かされるんだけど。
…今回は違った。
そう言えば今までも、何度かこの時間帯に桐嶋さんが居なかったこと、あったかも。
そんでそのせいで、
長いこと残業してる時も、あったような。
……俺は、最近のあの人しか知らないからなぁ。
そんな事をぼんやりと考えていると、
不意に社員の中から、
『そりゃ向こうの部長の息子のせいだろ』
という声が聞こえた。
「…部長の息子? って?」
反射的に尋ねると、
周りから「知らないのか」と驚きの言葉がかかる。
「……し、知りません」
・・・
…話によると。
どうやら桐嶋さんの呼ばれた先の部には、
社員の中に部長の息子が居るらしく。
美味しい立場の上にあぐらをかいて、
割と好き勝手しているようだ。
「…その方と桐嶋さんに何の関係が?」
『いや~
何かにつけてちょっかい掛けてるらしいよ。
同期らしいし。
お気に入りなのか気に入らないのか知らないけど』
『割と関わりのある部だしね…
あの人も流石に参ってるよねー…』
俺はゆっくりと話を整理しながら、
昼の車内での言葉を蘇らせた。
もしかして、
桐嶋さんが言った『反りが合わない同僚』って……
その、部長の息子さんか…?
確信は出来ないが、そうであったなら、
桐嶋さんが何故か隠そうとしてる奴じゃないか。
こうしちゃ居られない!
なかなか話してくれないのなら、
自分でその人のことを調べるなきゃ!!
「あの、ちなみに名前は…?!」
身を乗り出しやたら食いつき出す俺に、
社員は若干引き気味で首をかしげた。
『んー良く覚えてないけど、確か……
成宮…だったかな』
な、成宮、だと…
どこかの俳優みたいな名前しやがって、一体どいつなんだ。←
まだ不確かな人物へふつふつと怒りが込み上げる俺に、
それを察した明海さんが、
トントンとデスクを叩いてきた。
「桜庭君……今は目の前の課題に取り組みなさい。それも桐嶋さんのためよ」
「…………ハイ。」
……それからの時間。
もやもやとした心積りを残したまま、
俺はただひたすらに、
いつもより多めのデスクワークに勤しむこととなった。
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