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傲慢上等。
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〜桐嶋side〜
「じょ、冗談だろ…」
咄嗟に出た言葉がそれだった。
強い力で握られた手が、真剣な眼差しが、
そうでないことは十二分に物語っていた。
男に思いを伝えられるなんて、
俺は今や一度同じことを経験した身だ。
ただの冗談か否かの判別くらいつく。
…それでも俺はどこかで、
こいつの唐突な告白に対して、
どうしても信じたくないと、無理やり否定するような思いを抱いていたのだ。
「冗談だと思うのかよ」
「思うだろ……つーかそもそも、
こんな仕事中、に…ッ」
仕事中には似つかわしくない話だ。
そう言って会話から逃れようとしたのだが…
俺の文句は遮られ、
力強い腕に、通路の中へと引き寄せられた。
「成宮?! おい!」
桜庭とは違う。
俺の中での成宮は、何年経ったってただの同僚でしかないのだ。
それなのに…
こいつは、違ったのだろうか。
「何すッ…離せ!」
「静かにしろって…」
息のかかる距離で真っ直ぐな目が射るように俺を捕らえる。
おいおい…
いつもの人懐っこい顔はどうしたんだよ。
「へぇ、近くで見るとますますべっぴんさんだな」
熱い吐息と共に、恍惚とした言葉が聞こえる。
気色悪いことを言うな
そうあしらってやりたかったのに、どうしても声が出せない。
ぱくぱくと口を動かす俺に、成宮はにやりと口角を吊り上げた。
「…あの頑固で嫌われ者だったお前がさ。
いつの間に仲良い後輩作ってるとか…
なんか、すげぇムカつくんだけど」
「は…」
いつの間にか背中に回っている腕に、グッと力が込められた。
顔に触れた成宮の髪から、また酔いそうな匂いが香ってくる。
「…逃げんなよ?」
「!! ま、待てって、待っ…
んぅ…!」
大きな目がすっと閉じられたかと思うと、
刹那、
ギリギリまで近づけられていた唇を押し付けられた。
「っふ…」
嘘だろ…
何考えてんだこいつ…!!
広い倉庫の中、
段ボールの山に覆われた細く薄暗い通路の真ん中で…
容赦なく食むように口付けてくる成宮に、
俺は目を白黒させるしかなかった。
「…ぐっ! ん〜ッ!!」
息苦しくなって作業着の胸を押し返すも、
桜庭とはわけ違う。
体格も力も圧迫感も、まるで桁違いだ。
(くそ、馬鹿力が……
びくともしねぇッ…)
…だがしかし。
いくら力で勝ろうが、所詮バカはバカ。←
後ずさる俺の背後に段ボールが迫ってきた所で、
足を一歩引いて勢いよく股ぐらを蹴り上げれば、
余りにもあっさりと勝負はついた。
「ぶはっ! …はぁ、はぁ…お前!
何してんだよ…っ
…洒落になんねぇぞ!」
ふるふると握り締めた拳が震える。
これでもかって程汚い言葉で罵って、
ボコボコにしてやりたい衝動に駆られるが、
大声を出せる状況でもなく、騒ぎを起こせる場でもなく…。
思わず2mは退いた俺に、
成宮はその場にうずくまって股間を押さえながら、苦笑いを浮かべてきた。
「だからさ、これでわかったろ
洒落じゃねぇんだよ」
「……っ」
しれっとして言う成宮に、
ピクピクと口元が引き攣った。
何故俺なんだ、いつからなんだ。
ふつふつと湧き上がる疑問ならいくらでもある。
…ただこの時点では、
俺の中には、まだこの事実を信じ切れていない自分が居た。
ショックで朦朧とする頭を抱え、
しゃがみ込んだ成宮をキッと睨みつけてやる。
「……正気かよ」
「たりめーだろ。
でなきゃ男とキスなんか出来るかっての!」
「ばっ…でけぇ声で言うなここ響くんだから!」
こうなったらもう……
きっぱりと断ってやる他はねぇ。
子供のように頬を膨らませてむくれている成宮の前で、俺は辺りを確認しつつ、
咳払いした。
「………悪いが。
俺には、その…こ、恋人がいる。
だから…お前の気持ちには答えられない」
まさかこんなバリバリの仕事場勤務中に人を振ることになろうとは。
気を抜けば重くなる頭痛に、
俺は疲れたため息を吐く。
何で俺がこいつの前でこんな気遣った態度取らなきゃいけないんだ。
…まぁでも。
こう言ったからってまさか俺の相手が桜庭なんてことは、バレる由もないし…
今回の件、これで特に問題はないと踏んだ。
未だうずくまった成宮を見下ろしながら、
沈黙の中、ひたすらその反応を待つ俺。
……だがこの男は、
これで終わり出来るほど甘くはなかった。
「あーいやいや、そういうの関係ないから」
ひらひらと手を振る成宮は、
いつものへらりとした表情に戻っている。
「は。関係ない?」
思わぬ返答に戸惑う俺は、反射的にその言葉を問い返した。
「だってさ。
こういうのはやっぱ、最後に手に入れたもん勝ちだろ?
俺はどうしたって諦めらんねぇんだから…
桐嶋が俺に傾いちまえばいい話じゃん」
・
・
・
「王様か何かかッ!?!?」
手前勝手な所存をさらりと言い放ったそのエゴイストは、
腹の立つほど無垢な目をしていた。……
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これは強いww
桜庭頑張れーw
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