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酒と女と、三十路と少年
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チュンチュン、鳥が鳴く。その声で目覚めたナツメは、狭い室内事情で同じベッドに寝ているトキワの顔を見てハッとした。慌てて起こしにかかる。
「トキワ!トキワ!もう家を出る時間を過ぎてるよ!」
「んー、…ん、」
生返事をしてナツメに背を向け丸くなる。まだ寝るつもりなのか、ごそごそと布団の中に頭が消えた。
「ねえ!昨日言ってたでしよ。待ち合わせは朝の6時だよね?今、6時半だよ。他の人が待ってるよ、温泉旅行に置いてかれるよ!」
いや、温泉旅行ではない。密命を帯びた、東の果ての果ての果てへの旅路の筈である。
「んー…大丈夫だって…あいつらも起きてねえって…、」
「友達を待たせるなんて駄目、僕は許さないよ。」
「ダチじゃねえし…つか、ナツメは俺の母親かよ…。頼むから、マジで寝かせてくれよぉ、昨日は酒飲み過ぎて頭痛えんだ。」
プチ、ナツメの忍耐が音を立て千切れた。ガバッと布団を捲り、芋虫の如く丸まる男に詰め寄った。
「はぁ?酒だあ?昨日僕の寝た後にこっそり出掛けたなあ?何処の酒場に行ったんだ、どうせ女の居る所だろ。」
トキワは酒に弱い。なのに飲みたがる、そして女癖が悪くなるのだ。このままでは一児どころか二児三児の父親になる日も近い。いや、既に居るのかもしれなかった。
三十路の男に、ずっと清い体でいろとは言わない。しかし、せめて節度を守ってほしいのだ。
「んー…如何だったか…、」
曖昧な記憶、それを辿る様に探る。初めはただの立ち飲み酒場で飲んだ、そして隣に居た女と意気投合した気がする…如何しただろうか、口説いたのか、口説かれたのか。
「分からん。」
ナツメはどうせそんな事だろうと、トキワに跨り、くんくんと首や身体の匂いを嗅ぐ。
「おい、ちょっと、ナツメ、」
無視して、シンプルな白い綿シャツのボタンを外して鎖骨や胸の辺りを見る。何の跡もない。今回は大丈夫の様だ。
「良かった。ほら、トキワ着替えて。」
「あのなぁ…、そういうの朝一番は止めて、」
「ああ、そんなの生理現象でしょ。僕もなるし、お互い様だから気にしないで。」
ナツメの身体に当たるモノ。一緒のベッドに寝ているんだから、気にする程の事もない。しかもナツメにも付いてる。
「ナツメ…、お父さんはそんな子に育てた覚えはありません。もっと恥じらいを持って下さい。」
顔を覆って、ぐずぐずと泣き真似をしている。無精髭の三十路男を前に、呆れた様に少年が目を細めた。
「お父さんじゃないでしょ。」
「ああっ、反抗期?思春期?やっぱりベッドが同じなのが問題か。」
はあ…、ナツメが溜め息を吐いた。トキワの上から退き、さっさと身支度に向かう。
「馬鹿な事言ってないで、早く支度してよ。僕も薬草探しに行かないといけないんだから。」
「え、何で?ナツメは暫く働かなくても良いぞ。何せ昨日の金が有るし。」
「買い物の残りの金は、もしもの為に貯金してきたよ。此処に置いてたら、全部飲み代になってしまうだろ。」
「…はい。ごめんなさい。」
しっかり者のナツメに頭を下げ、駄目な大人は漸く顔を洗いに向かった。
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