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さあ、温泉に行こう
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のんびりと縁側で、水色の宝石を日に透かし眺める男。灰色の髪が鈍く光る、東国独特の和装、紅襟の襦袢の上に紫紺の着物を着ている。白く長い指に持った煙管から、煙を吸い込みふうっと薄い唇から吐き出した。
「紅丸、呼んだか?」
畳をたわませながら、のそりと身体の大きな男がやって来た。短い黒髪、黒眼、鋼の様な肉体。此方は黒一色の和装だった。
「ああ、黒鉄。これから少し留守にする。」
「ふむ、…何処へ行く。」
「最近は、少し風が冷たくなって来たと思わねえか。」
「…何だ、温泉か?」
「そ。」
薄い紅色の唇に宝石をあてる。水色の塊をそっと舌に乗せ、飴玉でも舐める様に口へ含んだ。
「ん、宝石は北国の物に限るな。取り分け、この水色の物が美味い。」
「そうか?どれも変わらんだろ。」
金の右眼、紅の左眼が可笑しそうに細まる。
「お前は、大味過ぎる。」
「ふん、別に良いだろ。オレの様な魔物が居るお陰で、粗末な宝石の利用価値が出る、」
「まあな、」
庭に煙管の灰を落とし、袂にしまう。すっと縁側から立ち上がり、紫紺に紅色の蝶が描かれた羽織を掴んで歩き出す。
「じゃあ、行ってくる。」
「おう、土産は温泉饅頭で良いぞ。」
微かに笑って手を挙げると、部屋を出て行った。それは、良くある光景。紅丸の温泉好きに付き合う気にはなれず、好物の饅頭を頼む代わりに、主人に成り代わり家の留守番を引き受けた。
長距離移動し、日が暮れる頃に北国と東国の境目にある温泉旅館に三人は着いた。
疲れた体を癒す為、それぞれの個室に通された後、打ち合わせ通りに直ぐに浴衣に着替えて廊下に出て来た。
「あー、肩凝った。」
トキワが肩をトントン叩きながら、今日は夕飯を食べて早目に寝るかと思っていると、
「ねえ、ここの温泉、風呂で酒が飲めるんでしょう?私、それをやってみたいわぁ。」
可愛らしい笑顔でマリンが言った。相変わらず胸は荒野だが、アップにしたピンクの髪から覗く頸は素晴らしい。この温泉旅館の温泉マークの付いた揃いの浴衣も似合う。
「ああ、さっき三人分頼んでおいたよ。」
カイが、相変わらずの爽やさとスマートさで微笑んだ。
「おう、良いねえ。風呂で酒か、」
さっき迄、早寝を考えていたとは思えぬ満面の笑みをトキワが浮かべる。風呂で女と酒、最高ではないか。俄然盛り上がる。
「よし、混浴は何処だ。」
きょろきょろするトキワに、マリンが不思議そうに言った。
「あら、ここは混浴とか無いわよ?」
「……え、だって…一緒に入るって、」
「そうよ、三人一緒よ。」
何の事を言っているのかと首を傾げる。そのやり取りを見ていたカイが、漸く思い至った。
「ああ。もしかして、トキワは勘違いしてるのかな。マリンは男性だよ。」
「な…、嘘…、」
撃沈だった。
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