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散歩って、こんなだっけ
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常は、夜半に抜き足差し足で、廊下をそろそろと移動した。自分の為に与えられた、牡丹の屏風のある部屋から玄関までは遠い。
部屋の見取り図を頭に浮かべ、最短のルートを考えて進む。
この屋敷に慣れるまで三日はかかった、今夜は月も明るい。この夜空の下なら、少しは外に出てうろつくのも大丈夫だろう。
「一瞬で喰われるって、きっと大袈裟な言い方だろうしさ、」
屋敷の中に居て、外には何の魔物の気配も感じられない。やっと玄関へたどり着く。
「行ってきます。」
小声で呟き、なるべく音を立てない様に慎重に扉を開けた。久し振りの外へ出て、玄関をまた慎重に閉じる。外門があり、その向こうには何処かへ続く山道が見えた。
「ここって、山の中なんだな。おお、気持ちいい。」
外の空気を大きく吸い、呑気に夜空を見上げる。外へ出ても本当になんて事なかった、拍子抜けする程何もいない。
「ほらな、やっぱり大袈裟なんだよ。」
あの道は何処に続くのか…少し探索してみたくなった。もし今後、目の色を戻す事が出来た時に備えて、逃げ道の確保をしておきたい。
「さて、散歩に行くか。」
外門を出ようとしたその瞬間、
シュッ!
目の前を何かが横切った残像と、前髪の一部が少しだけ、はらりと落ちた。
「うわっ!」
尻餅をつく、長く大きな爪を持った何かが居る。人間ではない、いや、そもそも此処には常以外に人間は居ない。
シュッ!
また爪を振り下ろす、外門の前に立ってガッチガッチと口を開け閉めしている。輪郭がぶよぶよとした、2メートルはある魔物だった。
常は恐怖で目を開いたまま、尻餅をついた格好で後退った。しかし、相手は追ってこない。外門を境にして、大きな口を開け閉めし、また爪を振り下ろす。何か見えないもので遮られている様だ。
「常。」
すぐ側、耳元に冷たい息がかかった。
「ぬぅわ!」
常は体を飛びあがらせ、驚いた。変な声が出る。
「何故、一人で外に居る、」
冷え冷えとした声音。返事も出来ず、常は縮こまる。
シュッ!ガッチガッチ!
「うるさい、」
煩しそうな、その一言。次の瞬間に、ギィアァァァっと声を上げ、ぶよぶよがのたうち回る。
「うるさい、」
パンッ!
破裂した。
「ひぃ…、」
常も、気持ちが破裂した。さあぁっと血の気が凄い勢いで引く。くらりと眩暈がした。
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