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これは、予想外にも
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背後から常を抱いた若い男が、荒い手付きで確認の為に襟へ手を差し込む。おもむろに、ぐっと掴んだ。
「何だ、胸はねえのか、」
チッと舌打ちが耳元で聞こえる。まだふらつき力なく目蓋を閉じる青い顔、その粟立つ肌に構わずに、男達は好き勝手に着物を乱す。
太った男は裾を勢い良く開き、怪我をしていない右足をすうっと撫でた。その肌は滑らかで、手の平を簡単に滑らせる。行き着いた奥、下着に手を伸ばそうとして、
「何だ?…蝶々の刺青、」
初めは本物の蝶々かと思ったが、それにしては見た事もない色合いだった。黒揚羽の黒い部分が全て紅色に成り変わった羽根には、裏面の後翅外縁にただの刺青では考えられない金斑が並び、他の揚羽と同じ様に尾状突起がある。そして後翅前縁に白い帯が見られた。それはまるで標本の様に色鮮やかで、生きていると思わせる。余程の腕利きに彫られたのか、特殊技能の技なのか。
南国に於いては宗教的理由で多くの者が入れる刺青だが、東国には刺青を彫る者は然程いない。
「何だお前、堅気じゃないのか…若しくはその囲われ者か。」
背中越しに身を乗り出して覗き込んだ若い男が、自分の腕に彫られた蛇の刺青の事を思いながら言う。この男自身も組の使いでここに居る。
「何だよ、どっかの組の囲われ者だったら厄介じゃねえか。」
太めの男は眉を顰める。要らぬ厄介事を背負うのは面倒だったし、元よりこの男は堅気で、古物屋に借金があり断れずに引き受けた仕事だった。
「ふん。そんなビビるこたねえよ。どうせ花街に売ったら刺青は消される、誰がやったかなんて足もつかねえ。裏では組同士の協定もある、そこを突かねえのが互いの約束事だぜ。」
「そ、そうなのか?」
「何怖気付いてんだよ。情けねえ奴だな。それにこんな際どい所に彫るなんざ、よっぽどの好き者だろ。元々、そんな商売やってたんじゃねえのか、」
「ああ…成る程な。確かにここは、そんな事でもしなけりゃ見えはしねえ、」
一気に男の気が楽になった。色事が好きな者なら、何の気兼ねもなく思う存分振る舞えるというものだ。
「まさかっ、違う、」
途中からやっとまともに話が聞こえ出した常は、目蓋を閉じたまま首を振ったが、もう二人は都合良く解釈した事を曲げるつもりはない。
「ほら、お前からでいいからさっさと済ませろよ。」
「ちょっと馬鹿かっ、わ、止めろって!ほんと触んな!俺はそんなんじゃ、ん、んー!」
若い男が常の口を塞ぐ。太った男はじたばたと足を動かす常の膝を力任せに割り、自分の着物の裾をくつろげた。
「んんー!ん!!」
若い男は暇潰しに、口を抑えたままの常の襟元をくつろげて、白いうなじを吸う。柔らかな肌は良い匂いがし、男の気持ちを高ぶらせる。女と比べても遜色ない。寧ろ、これが同じ男とは到底思えず不思議な心持ちだ。
胸も無く、モノが付いてるとなれば興醒めしそうだと、男色に興味が無い若い男は様子見で太った男に先を譲ったのだが、予想外に気持ちも体も乗っている。
「はぁ…これ女もんだろ。良くこんな小さい下着履いてんなぁ、」
「つ!」
ひらひらした下着の事を言われ、一気に常の顔が朱に染まる。ハツの家で男物に変えようとしたがサイズが大きく、それは叶わなかった。
「そんなん良いから、早く脱がせろよ。」
「ああ、そうだな。さっさとしねえと、」
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