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男心と、ピンク色の反撃
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混浴に盛り上がった気持ちから一転し、トキワはどん底の気分で男湯に入ろうと浴衣を脱いだものの、矢張り隣に居るマリンが気になりチラ見した。
見事に真っ平ら、腰に巻いたタオル一枚であのピンクの手鏡を持ち、つけまつ毛を剥がしている。
「ああ、もう!何だって、そんな格好してんだよ、紛らわしいだろ。」
もう、文句の一つも言いたい。抑えきれないもやもやを込めた、完全なる八つ当たりだった。
「はあ?何それ。そっちが勘違いしといて、私を責めるの?」
ごもっとも、だがトキワの苛立ちは下半身から来る、諸々の事情を抱えた深いものだ。要するに溜まっている。子供と同居中の身、これでも色々気を付けている。
「何で、初対面の時に言ってくれなかった!俺の気遣いとか、純情とか、淡い期待とか、こう、色々なもんが無駄になっただろーが!」
「知らねえよ!バッカじゃね!!」
とうとう、男のドスの効いた低音が出た。先程迄は、可憐な美少女声だったのに。
「ちょっと、二人共、」
カイが止めようとした時、電光石火の如くマリンが手鏡を振り下ろした、
「ちちんぷいぷい!」
奇妙な掛け声。もわっとトキワを取り囲むピンク色の煙。ごほごほ咳き込む、マリンの特殊技能は魔法だ。何かの呪いをかけられた、しかし、咳き込みながら腰巻きタオル一枚の体を見回しても、異変は無い。
「ふんっ!」
手鏡を持ったまま、マリンは浴室へ続く扉を開けて脱衣所を出て行った。
慌てて、脱衣所に備え付けてある大きな鏡の前に立った。しっかりと自分を見る、淡い金髪、水色の瞳、風呂場で剃ろうと思っている無精髭。完璧だった、何の変化も無い。
「あーあ、もう。あんなに怒らせたら、魔法は解いて貰えないよ。」
「平気だっての、別に何の呪いもかかってねえよ。唯の脅しだろ。」
「そうかなぁ、そうだと良いけど。」
カイはじっと、トキワを頭の先から爪先迄検分する様に見ようとした。彼の特殊技能は相手の真の姿が視える、そして偽りをあぶり出す事。ただし、普通にしていても視える訳ではない。能力を使う時は緑の瞳が焦点を失くし、奇妙な光を宿す。
四国の中でも北国は取り分け、特殊技能者が少ない。マリンもカイも、稀有な存在だった。かと言って、他の三国に多く居る訳では無い、何処へ行っても稀なのだ。
「止めろ、カイ。」
素早い動きでカイの瞳を覆う手の平。
「何故、トキワ。私が視れば直ぐに判るのに、」
「良いって、気持ちだけもらっとく。ありがとよ、」
危ないところだったと冷や汗をかく。
「そう、じゃあ困った時は言って。助けられる事があるなら、協力するから。」
「ああ、」
一緒に浴室へ向かう。折角の申し出だが、トキワにはカイを頼れない事情があった。きっと、どんなに困ったとしても協力を申し出る事は無いだろう。
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