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夢から醒めれば、そこに
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常は夢の中のボロ家で紅丸に微笑んだ。しかし側に居た筈の棗の姿は無く、ボロ家も形を変え、いつの間にか果ての屋敷の牡丹の間になっている。
「随分、細くなったな。」
そう言われ、常は寝衣を身に付けた自分の体を見た。何も変わらない、以前の様に北国の男よりは小柄で細い体型だがきちんと筋肉も有る。しかし肌の色は北国に住んでいた頃の白さ、恐らく髪も瞳も魔法で得た姿に戻っているに違いなかった。
あれ、と首を傾げて良く良く考えて思い出す。そうだ、白楊に戻して貰ったのではなかったか、
「白楊がさ、頼んだら髪と目と肌の色を変えてくれたんだ。案外、良い奴だな。」
何かを忘れてる気がしたが、先ずは色が戻っている事を説明しようと思った。
「……そうか、あれは気難しい。きっとお前の事を気に入ったんだろう。」
「そうかな。ああ、そう言えば明日は、」
明日は、その先は何だっただろう…続く言葉が思い出せない。しかしこの部屋は何故こうも暗いのか、明かりの一つも灯しておらず閉めてる筈の障子から夜の風を感じる。
ああそうだ、寝るところだったからだと、常は深く考えずに畳に敷かれたままの布団に座った。
「紅丸は寝ないのか、」
何だか布団の隣に立つ紅丸が気になる。毎日会っている筈なのに、とても会いたかったのだと感じた。
「お前は、まだ夢から覚めぬのか、」
「え?」
意味が分からない。まだ寝てなどいないし、その証拠に話しているではないか。
紅丸が布団に膝を着く、常の手を握ってそっと薄い唇を押し付けた。その冷んやりとした感触にも憶えが有る。手の甲が擽ったくて首を竦める、
「はは、紅丸の唇は相変わらず冷たいな。」
「ふ、相変わらずお前は温かい。」
そう言って、常の体を抱き締めた。その着物からは、いつもの微かな煙草の香り。目を閉じ抱き締め返す。
ああ、この腕をどれ程待っていただろう。もう二度と会えなくても仕方ないと諦めもしたのに、なのに何故…これは未練が見せる夢か。
「ごめんな、紅丸。俺は果ての屋敷が嫌いな訳じゃないんだ、家族が北国に居るから如何しても帰らないとならない。この身の全てを賭けて守ると誓ったんだ。」
どうか、まだ夢よ醒めずにいてくれないか。きっと人と魔の感じ方は違うだろう、家族の概念も無いかもしれない。しかし理解されずとも良い、気持ちを話しておきたいと常は言葉に力を込める。
「…棗の事だろう。」
「うん。もう俺の家族はナツメ唯一人なんだ。例え目を失くしても、側に居たい。」
そうだ、明日はいよいよ魔法を解く日。そして北国へ行く。
「お前の決めた事の邪魔はせぬ、その覚悟で此処へ来た。しかし、一つだけ聞かせてくれ、」
その言葉に閉じていた目蓋を開ける。しかし、今度は何も見えない。真っ暗な闇の中だ。
だが手の平は確かに着物に触れている、すんと鼻を動かせば煙草の匂いも感じる。
「…何?紅丸。」
自分の体を抱き締めている腕は紅丸に違いない。夢から醒めても彼は此処に居る、この西国の屋敷に来てくれたのだ。
「会いたかったのは、俺の使い魔だけか?」
「ううん、違う。せめて使い魔でもいいから、声が聴きたかった、話してみたかった、触れてみたかった。…来てくれて有難う、本当は紅丸自身に会いたかった。」
目が見えなくなる前に、最後に見たかったのは紅丸だった。今頃、こんな事を言うのは馬鹿なのだろう。
「俺は、紅丸が好きなんだ。」
常の腕の中で体がピクリと動いた。常の背を抱く力が一層強まる。
「…それを知れば、もっと早くに来たものを。お前は互いの気持ちが大事だと言ったろ、だからこそずっと我慢をしてきた。」
そういえば、そんな事を尤もらしく語り、紅丸を遠ざけようとした事もあった。それに思い至り、思わず笑う。
「うん。そうだった、もう待たなくていいよ。」
「常、」
冷たいキスを受けながら、ベッドにゆっくりと寝かせられる。いつかの様に足の裏で顔を押したりせず、ワンピース型の寝間着の裾から手の平が入り込み、太腿を撫でられる擽ったさにも口を結んで我慢した。
下着のゴムに指先が掛かる、男性物に比べ小さな面積の薄い布地。フリルとサイドを飾るリボンの付いた華美なそれは、辛うじて常のモノを包んでいる。
「あ、ちょ、待って。パンツ見んな!」
ハッとして言ったが時既に遅く、完全に裾は捲られ腹の上で溜まっている。へその辺りも外気に晒されていて、慌てて隠そうとした常の手の平はあっさりと紅丸に捕まった。
「中々可愛らしい物を履いてるな、」
「だぁ、止めろ!言うなって!」
羞恥心で真っ赤になった常の顔を見て、紅丸はその頬にくちづける。照れている表情も愛おしい。
本人はまだ初花の効果を知らずにいるのだと察した、実際のところ、この女性用のひらひらパンツは違和感無く常の下半身を覆っている。
「赤くなってる、」
「うう、くっそ!やっぱり風呂の後で男物のパンツにするべきだった。」
何が何でも、血が出てないなら断固拒否するべきだったと悔しがる。まさか、こんな日に行為に及ぶ事になるとは思ってもみなかった。
「どうせ脱ぐ、そんなに気にする事もあるまい。」
「…それもそうか、」
見られた物は仕方ない、常はやけくそ気味に観念した。
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