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二度目の贈り物と、二度目の…
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牡丹の間の前。月の輝きを、二人は酒を飲みながら縁側で並んで見ている。夜空をこうして紅丸と眺める日が来るとは、屋敷に来たばかりの頃の常には考えられない事だった。
「これを渡そうと思って、お前の帰りをずっと待っていた。肌を傷める首飾りよりは、この方が良かろうと思って作り直した。」
そう言って紅丸が差し出したのは、かんざしだった。大きな水色宝石に、金細工の繊細な蝶がとまっている。その翅には紅色の宝石が輝く。
「うわー…ペンダントの時より豪華になってる。」
手にしていた杯を銚子が乗った盆へ置き、紅丸の手元を覗く。一体これは幾らするのかと、空いた口が塞がらない。
「気に入らんか?」
「いいや、そうじゃねえけど。でもこんな見事なかんざしとかさ、俺には似合わねえだろ?」
「いいや、これが一番似合うのはお前だ。それに、首飾りの意味はもう教えただろう。これはその代わりだ、俺からは受け取れないか?」
「まさか、」
常は紅丸の方へ向き直り、寝衣と羽織りをさっと整え正座した。まださほど飲んではいない、少し心地よいが酔ってなくて良かったと内心安堵する。
「不束者ですが、どうぞ末永くよしなにお願い致します。」
軽く肘を折り三つ指をついて、すっと背筋から首までを伸ばした姿勢で頭を下げる。濃紺の髪がうなじを滑り、肩へと流れた。
「ああ、それが人間の流儀なのだな。俺の方こそ、宜しく頼む。」
「うん。」
紅丸が案外器用な手付きで濃紺の髪を結い上げ、かんざしで留めた。それは紅丸の言った通りに、常の髪色と面差しによく映える。
「やはり、お前に似合う。待った甲斐があった。」
「ありがとな、それと待たせてごめん。」
紅丸は口にしないが、このかんざしを作る為に外出した際に、常は白楊と契約を結んでこの地を去った。それだけに、思い入れは深い。
「いいや。それも良い経験だった、愛する者と離れる気持ちが分かったからな。」
「愛する者、」
常は小さく呟く。紅丸がそう言って思い浮かべる顔が、これから先も変わらずにいてくれればいいと思う。また、自身もそうでありたい。
「よい香りがする。」
誘われて、紅丸の顔が近付く。常は、眼裏に星の輝きを写して目を閉じる、やがて柔らかく冷んやりとした唇が触れた。
そこから先は、互いにもつれるように牡丹の間へ移動する。屋敷は広く、黒鉄と棗の部屋、紫や赤月の泊まっている離れの客間は遠い。気恥ずかしいが緑太に感謝した。
かんざしを抜かれ、髪が解れる間に布団へ寝かされる。ちょうど今夜の空の色と似た深い紺は、開いた障子の隙間から照らす月の明かりを受け輝く。
「俺の夜空だな。」
紅丸の瞳が愛しげに細まる。魔物はそういう性なのか、夜の方がより一層美しい。金と紅の瞳は内から輝き、触れてみよと白磁の肌は冴え冴えと闇に浮かぶ。妖しく幻想的な色香に息を飲む。
「何か酔いそう。」
「何だ、飲み過ぎたか?」
「弱いんだ。」
今は酒というより、紅丸の魅力にだ。
「そうか、」
分かっているのかいないのか、紅丸は唇の端を少し上げて優しく笑む。常の髪にくちづけ、首筋を吸う。手が下へ降り、するりと帯を解くと前合わせが緩み、侵入する手の平が素肌を這うのを容易く許す。
「あ、」
下着に触れられて思わず膝を立てる。衣は腿を撫でて横へ滑り、隠したいのに余計に事態を悪化させた。
慌てて覆う手の下で、薄紫色のレースがセクシーな下着が見え隠れしている。
「ちょっ、待て!パンツは見るなっ!」
「ああ、今日は透けたのを着けてるな。」
「言うなって!」
常としては男性用にしたいが、緑太が用意してくれた下着は全て女性物で、かといって以前の物は大きくてずり落ちる。いっそ履かずに過ごしてみるかとも思ったが、それも落ち着かない。可愛い路線で攻めるか、セクシーに攻めるのか、選択肢は狭かった。
「どうせ脱ぐ、気にするな。」
そうだけど、そうなんだけど、と渋顏だ。この姿って変態っぽくないかと心配になるが、紅丸は平然としたものだ。
「俺だけしか見ぬのだから、そのうち慣れる。」
確かに、履いてる姿を他に見せる予定はない。
「うん、」
ようやく手を退ける、代わりに冷んやりとした手が触れた。繊細なレース越しに撫でられ、思わず体が揺れる。
「っはぁ…、」
初めての時は目が見えず、場所は西国にある白楊の屋敷だった。二度目の今は、あの時夢に見た牡丹の間にいる。すんと、鼻を動かせば同じ煙草の香りだ。
「夢じゃないよな、」
「これが夢だと思うか?」
薄い下着はいつの間にか取られ、広がった桜色の寝衣に袖を通しただけの姿だ。胸を吸われ、膨らみ熱を持ったモノを直に握られると腰が揺れる。更に、その下の穴を探られると濡れた音が聞こえだした。
「あ、ああ、」
快感は、間違いなくこれは現実だと教える。寧ろ、これが夢なら恐ろしい。これ程の快楽を身体に与える事が出来る程、常は想像豊かではない。
「夢じゃない。」
「そうだ、お前は確かに俺の腕の中に居る。夢であってはたまらぬ、」
それは、常にではなく自身へ言った言葉。魔物である紅丸ですらも、浅い眠りの間に愛しい人を抱く夢を見て過ごす日々だった。
「ああ、紅丸。」
縋る背は、今や常と同じく素肌を晒していた。冷んやりとして、しかし手の平に馴染む肌は常の熱を受けて温まる。
「常、」
「あっ、あん、」
揺すられ、甘やかな声を漏らす。黒い瞳は目蓋に覆われ、睫毛が震える。慣れ始めた身体は、紅丸の与える行為に対して従順で素直に反応し、常の平常心など欠片も残さない。
その所為で、紅丸の方も途中で止める事が難しく、またもや人には強過ぎる精を奥に放たれた常は気が遠のいた。
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