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知れては、後が無い
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「はく…よ…うさ…、」
「棗、無理に喋らずとも良い。水を飲むか、」
棗はこれが死後の夢なのか、それとも現実なのかと迷う。言葉を話そうとするが、喉に引っ掛かり思う様には出て来ない。諦めて頷くと、白楊がベッドのクッションを並べて、そこへ棗の体を支えて凭れさせた。赤月の仕事振りを真似ているが、明らかに覚束ない手つきに、これは如何やら現実の様だと白楊を見詰める。
「ゆっくり飲め、」
側に置いてある水差しからコップへ少し水を注ぐと、力の入らない棗の代わりに飲ませる。棗の指がコップを持つ手の甲に触れた、
「もう良いのか、」
「はい、」
水で潤った喉は、先程よりも音の滑りを良くしてくれた。
広いベッドの端に佇み、玄関のある方角を見詰めじっとしていた青藍がくるりと二人を振り返り、寄って来ると満面の笑顔でぱちぱちと手を叩く。
「せいらんすごいって。でねえ、ともだちもいるの。」
白楊は外の騒動を察していたので、青藍の言いたい事が少しは理解出来た。
「そろそろ常が客を連れて来る。」
棗は白楊と話したい事があったが、まだ上手く喋れそうも無いのでそれは後に改める事にした。何よりも、白楊の手の温度が元に戻っている事が嬉しい、棗の願いが叶ったのだろう。
コン、コン、
ノック音に白楊が答える。分かっていたが、肩に鳳凰を乗せた常が少年を連れていて、後ろには赤月が控えていた。
「あっ、ナツメ!やっと起きたか!」
鳳凰が部屋を飛び、常が駆け寄って行く。赤月は家族が抱き合う感動的な場面を眺めながら、竜胆の顔近くへ腰を屈め囁く。
「常様には、あの事は知らせるな。もし棗様と同じ事があれば、お前の命は今度こそ無いだろう。」
それは間違いなく本気なのだと、子供である竜胆にも分かった。赤月の顔には笑みなど無い、久し振りに見る淡い灰色の青い目は暗い色を湛えている。
「紅丸様は、そう甘い方では無い。今回の事も、後程に判断が下るだろう。」
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