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①
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親切な魔法使いが心の綺麗なお姫様に魔法をかけて、お姫様は王子様と結ばれましたとさ。
めでたし、めでたし。
「って、親切な、ねぇ」
そんなのわかんねぇくせに。と小さく愚痴をこぼし、緑が生い茂る木の上で寄っ掛かりつつ瞑想にふける。
パタリと閉じてしまった本は、最早用済みで古びた表紙を惜しげもなく晒していた。
魔法使い……。
だってそうだろう?魔法使いが本当に親切なだったかなんてわからない。
願いを叶えたのには、下心があったからかもしれないし、何なら無理やり魔法を使わせられた可能性だってあるわけで。
そもそも、綺麗な心を持つお姫様だったら魔法使いなんかに頼らなくとも何とかなったんじゃないか、とか。
魔法使いは、お姫様のつかいすての道具だったんじゃないか、とかさ。
実際、お姫様は幸せになったが、魔法使いがその後どうなったかは記されていないし、
読者もそんなところに興味はないのだろう。
例え、その魔法使いが死んでいたとしても。
結局はその程度の存在に過ぎないのだ……僕だって。
「はぁ。魔法使いって、いっつも損してばっかじゃあないか」
深いため息とその言葉を最後に、重たくなった瞼は力を入れるのを止め、ゆったりと生温い夢の中へと意識を預けた。
(次に見る夢は、幸せな夢だといいな)
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