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「ねぇ、魔法使いさん。私、好きな人が出来たの! きっと運命の王子様!」
と、無邪気に笑う
「そうかい、そうかい。良かったね」
静かに笑い返す。
「ねぇ、魔法使いさん……。王子様は、髪が長くて綺麗な子が好きなんだって、私じゃ無理だよね……」
と、涙を堪えて笑う。
「そうかい、そうかい大丈夫。だったら、僕の髪をあげるよ。長くて綺麗な髪は、きっと君によく似合う」
愛しそうに笑い返す。
「ねぇ、魔法使いさん! 王子様に髪を褒められたの……!でも彼は、透き通った美しい瞳が好きなんだって。いーな、魔法使いさんは綺麗な瞳で」
と、物欲しそうに笑う。
「そうかい、そうかい。だったら、僕の瞳をあげよう。透き通った美しい瞳は、きっと君の方がよく似合う」
嬉しそうに笑い返す。
「ねぇ、魔法使いさん。王子様が君の容姿は、とても綺麗だねって言ってくれたの!でも、もっと綺麗になりたい。次は、王子様の隣を歩くのに相応しい、綺麗な足が良いわ。」
と、あやしく笑う。
「そうかい、そうかい心配なんて要らないよ。僕の足をあげるから。きっと君には白くて長い足がよく似合う」
困ったように笑い返す。
「ねぇ、魔法使いさん、魔法使いさん。」
髪も目も失って、手も足も……。
あぁ、一体僕にはあと何が残っているだろうか。
「おい、もうこれ以上あの女に関わるのは止めろ。……こんな姿になってまで……お前、死ぬぞ?」
姿を見ることは叶わないが、目の前に居るのだろう仲間の声に耳をすます。
「いいんだよ、彼女が幸せなら。」
そう言って気づく。
あぁ、まだ残っていたじゃないか。
「……声だ」
僕はまだ声が出る。
……歌おう、だったら歌おう。
彼女の為に、みんなの幸せを願って、歌おう、歌おう。
一つ一つに想いを込めて。毎日、毎日。
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