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「ねぇ、魔法使いさん。彼がね、最近よく耳にする綺麗な歌声の人が気になってるんだって。こんな美しい歌声の持ち主はきっと綺麗な心をしているのだろう。ぜひとも我が嫁に、って言ってるみたい……。ねえ、その歌声って魔法使いさんだよね。その歌声私に頂戴よ、いいでしょ?」
と、欲にまみれた顔で笑う。
「___そうかい。でも僕の声を取ってしまったら、もう君に魔法をかけてあげられないよ?」
「いいの! いいから、早く頂戴」
「……そうかい、そうかい。だったら君に僕の歌声をあげるよ。美しい声は、きっと君によく似合う」
寂しそうに笑い返す。
そして
「ねぇ、魔法使いさん、魔法使いさん。」
出なくなった声の代わりに、ニコリと微笑む。
「あ、そっか。喋れないんだった」
淡々とそう言う彼女に僕は笑う。
(僕は声を失って、魔力ももう無い。前にも言ったが、君の願いは聞いてあげられない)
伝わらないのは分かっているが、申し訳なさそうに笑う僕の顔を横目に口を開く。
「もういいのよ。私、王子様と結婚する事になったの。だから魔法使いさん、貴方はもう要らないのよ」
と、歪んだ顔で笑う、笑う、笑う笑う。
遠ざかっていく彼女の背中と、どこからともなく聞こえた僕の名を呼ぶ声に、僕は泣きながら
______笑った。
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