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しかし絶望的な気分は出来事次第で一瞬にして変わる。
これまでに無く重い足取りで家に向かっていた俺は見つけてしまったからだ。
弱々しく吐かれる息を。
あいつの存在を。
この辺りを彷徨いて、二度は確認した路地裏、先週と同じ暗闇に。
しっかりとその姿を確認して、
小さな吐息を聞きながら良く分からない感情が蠢いた。
先程の鬱々しいものでは無いが、このまま委員長の方に足を進めていいのか躊躇う。
俺は、ついさっき蓋をしようと決心した“期待”を咬み殺すべきでは無いのか。
じわじわと変な緊張感が襲う中、一際苦しそうな嗚咽が響いた。
「うぇっ…ぉ、えっ…く、は、はあ…」
掠れた声と共に暗闇で影が揺れ動く。
「…委員長?」
違和感を感じて思わず声が出た。
そんな声は相手に届く程の大きさも持たず、虚しく消えていく。
おい、ともう一度声をかけるが、やはり聞こえていない様だ。
変わらず嘔吐する姿に目を凝らす。
前回と同じ様に壁にもたれ掛かかっていると思っていた体は、力無く地べたに座り込んでいる。
気のせいかも知れないが、以前より増して苦しそうだ。
「…おい、大丈夫か」
諦めにも似た挫折感を味わいながら路地裏に入り込む。
妙に焦ったような響きを持った声は、流石に委員長にも聞こえたらしい。
ゆっくりとこちらを振り返って静かに呟いた。
「…今日はもう来ないと思ってた」
俺の足が、見開かれた目が、あれこれ考えていた思考までも止まってしまった。
余りに不安定な音だったせいで、聞き間違えたのかと自分の耳を疑う程に信じられない言葉だった。
委員長、どうしたんだよ。
伝えようとするが、喉がつっかえて声が出ない。
何で、
何でそんな…泣きそうな顔してるんだよ。
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