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「…怖かったね、弱くなんかないよ」
「………」
必死に涙を誤魔化そうとする俺に、目の前の男は優しく声を掛けてくれる。
心を読んだかのような言葉だ。
少し驚いて、それでも深く安心した。
「あの……この事は誰にも言わないでいてくれないか」
俯き、目元を袖で拭いながら言う。
「君がそう望むなら…でも、これは犯罪だよ。あいつらを放っておいていいの?」
「………」
それでも、これを誰かに言うなんて絶対に出来ない。
返答に困って居ると、少しの間があった後に言うべきかそうでないかといった様子で男が切り出した。
「ねえ、やっぱり南河君とは関わらない方がいいよ」
「……南河?」
それは言いにくそうに、しかしはっきりした響きだった。
「僕、南河君が君の良くない噂を言いふらして居る所を見たんだ」
一瞬、時間が止まる。
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