アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
迎え 2 (士郎side)
-
『……おまえも龍之介に当てられたクチか?』
『んなわけねーし!』
わめけばわめくほど、龍之介を恐れているのだと認めているようなものなのだ。
キャンキャンわめく仔犬のような少年を前に、仮にも恋人をけなされているにも関わらず、どうにも憎めなくて参った。
『色々迷惑をかけて、すまない』
『……っ、別にわかりゃいいんだよ』
素直に折れると途端に失速する辺りに、隠し切れない人の良さが滲む。
『名前は?』
『は? 人に名前を聞くのにてめぇは名乗らねぇとか、何様だよ』
まったくだと苦笑した。
『士郎だ』
『……レン』
わずかにためらった後、ポツリと答えが返ってきた。
偽名だろうか?
組織の人間ならそれも無理からぬことに思えたし、呼び合う便宜上の手段としては真の名前である必要もなかったため、黙ってうなずいた。
だがレンはしばし唸った後、くそっと短く吐き捨てた。
『……ホントはカレンってんだ。けど、ぜってぇこの名前で呼ぶなよ……?』
ドス黒いオーラを振りまきながら、脅しかけてくる。
『綺麗な名前じゃないか』
『……っ、女みてぇでやなんだよっ』
『どんな字を書くんだ?』
『は……?』
『漢字ではどう書くんだと聞いている。それとも外国名か?』
堀の深い顔立ちだが、半分くらいは日本の血が流れているように見えたのだが。
『……どうって、苛烈の苛に……』
『レンは?』
『……錬金術の錬』
『なんだ、充分男らしい名前じゃないか』
『……っ』
しばし無言の時が流れた。
『……そんなん、はじめて言われたし』
『なら、これからは自慢するといい』
『……変なヤツ』
クスッと、レン……カレンが笑った気がした。
『……なぁ、あんた、あのクズのどこに惚れたんだ?』
限りなく独りで、苛烈に突き進んでいくその背中に、たとえようもないほど暗い影を見た気がした。
『……独りにしておけないと感じた」
『そんなん、単なる同情じゃねーか』
『はじめはな、……そうだったかもしれない。だが、強い男の脆さや儚さに触れるたび、不思議なほど愛しさばかりが募っていった』
苦しさと表裏一体の焼けつくようなギリギリの関係性に毒され、気づけば後戻りできない場所まで引きずりこまれてしまった。
もはや戻れない。
戻りたくもない。
あの男が燃え盛る炎の中を鮮やかに翔け抜ける様を、誰より近くで見ていたい。
『自分でなければ勤まらないというのは、ひどく気分がいいものだと思わないか?』
『……惚気かよ』
『君が言わせたんだろう?』
だが、普段の自分なら答えていたかどうか。
龍之介が無事だとわかって、やはり少しおかしくなっているのかもしれない。
『……はいはい。ごちそうさまでしたっ。くそっ、無性にアキラに会いたくなっちまったじゃねーか!』
「君はどうなんだ? アキラとはどんな風に出会って、どんな部分に惹かれた?」
初対面で少し踏み込み過ぎたかとも思ったが、わずかな沈黙の後、カレンは暇つぶしに話してやるよ、と前置きして、ポツリポツリと昔を語り始めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
194 / 297