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リューの恋人 2 (カレンside)
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「……頼むから、おかしな言い方をしてくれるなよ? あのバカを怒らせた日には、何をしでかすかわかったもんじゃない」
士郎の顔が青ざめた。
「案外信用されてねぇのな」
「信用うんぬんの話じゃない。無理難題を押しつける口実を与えること自体が問題なんだ」
「ずいぶん尻に敷かれてんじゃねーか」
「あの男を上手く操縦できたら、大げさではなく天下が取れると思うぞ」
額を押さえ、士郎がげんなりとため息をつく。
「よくわかんねぇけど、あんたもけっこう苦労してんだな?」
慰めれば、苦笑まじりにグリグリと頭を撫でられた。
「なぁ、あんた、年の離れた弟とか妹とかいんだろ?」
どうにもガキ扱いされている気がしてならない。
「下に二人弟がいるが……上は2個下だが、確かにもう一人は10近く離れているな。無意識に子供扱いしていたなら、すまなかった」
「や、そう素直に謝られても複雑っつーか……」
他の誰かにガキ扱いなどされた日には烈火のごとく怒り狂ったろうが、自分から甘えている自覚があるだけに、なんだかなぁ……とため息をつく。
「あ、ハヤトのヤツにはオレが泣いたとか、ぜってー言うなよ? 言いやがったらいくらあんたでもブッ殺すからな!」
「ハヤト?」
「アキラを巡る腐れ縁っつーか、同じ色関連の隠密チームのヤツ。年下のくせにすっげー生意気なんだ」
チビでガキのくせして、ミニチュア版アキラなんざ気取りやがって、まったく似合ってねーっつーの! と毒づけば、
「仲がいいんだな」
と返ってきて、思わずはぁっ!? と目を見開いた。
「……どう取ったらそうなるんだよ!?」
「彼のことを語る時、やけに生き生きして見えたからな。いいライバルなんだろう」
「違ぇーし!」
「まぁ近すぎると色々と見えなくなるものだ」
まるで悟りを開いた僧のように一人納得する士郎の腹を力任せに殴りつけ、フンと鼻を鳴らした。
誰があんなやつをライバルだなんて認めてやるものか。
未だに色関連の仕事もうまくできない、チームのお荷物が。
愛想笑いの一つもできなくて、一人だけ明らかに常連客が少なく、客に抱かれた夜には決まってシャワー室にこもり、長時間出てこなくなる。
ボロボロに傷ついた姿を見たアキラがすまないと罪悪感の中でハヤトを抱きしめるたびに、胸をかきむしりたくなるほどの嫉妬と怒りを覚えた。
そんなに嫌ならやめちまえ!
何度もそう叫んではケンカになった。
互いに譲れないものがあり、必死に戦っていることはわかっていても、アキラをいたずらに苦しめる弱さなど悪でしかない。
好きでもない相手に抱かれた身体をアキラとのそれで上書きし、耐えて……耐えて。
あのクソ真面目なバカがいつか本気で折れるのではないかと不安になった。
仲間を壊した自分を、アキラは決して許さないだろう。
ただでさえ重過ぎるものを背負うアキラに、これ以上の負荷などかけてたまるものか。
自分の前ではけして涙を見せない二つ年下の意地っ張りな幼馴染を見ていると、得体の知れないドス黒い感情が湧き上がってきて、どうにも抑えがきかなくなる。
嫌いなのかと問われたら、間違いなく頷くだろう。
だが、ハヤトが誰かにひどい目に合わされたと聞けば怒り狂い、何でもっと上手くやれないのかと詰る感情の裏に、赤の他人に対するのとは明らかに違う種類の感情が存在しているのもまた確かだった。
明日をも見えない暗い道を、いつだって身を寄せ合って生きてきた。
死ぬよりもつらい目にあったことだって、数知れずある。
独り行こうとするアキラに捨て身ですがり、共に堕ちた仲間だ。
自分がバカにするのはよくても、誰かにバカにされれば腹が立ち、それが原因でケンカになるなど日常茶飯事だった。
互いにけして口にはしなかったが、ハヤトもまた自分が理由のケンカを買うことも多かったはずで。
「……くそっ」
だから腐れ縁なんてものは嫌なのだ。
この上なく複雑で厄介で、手に負えない。
そうこうするうちに、こちらの動向をセキュリティーで探知したのだろう、サブリーダーのユーリが廊下の向こうから小走りに近づいてきた。
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