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ささくれ立つ (士郎side)
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「退路を確保したのはいいけどさ、人目のないとこのが逆に危ねーだろーが」
士郎にうながされ、素直に壁際まで引いたカレンだったが、一転して呆れたように長めの髪をかき上げた。
ふわりと額を覆う髪の下から、心持ちあごを持ち上げ、色香滴る視線を周囲を囲う男のうち、無精髭を生やしたガタイのいい男に斜めの視線を送る。
「あんた、ここの古株だろ? 守ってくれたらセルフでするとこじっくり舐めるように視姦してやるぜ?」
「……っ、見るだけかよ……?」
ゴクリと喉を鳴らした男が下卑た笑みを浮かべた。
「交渉上手だな? なら、最後は靴で踏んで、気持ちよくイカせてやるよ」
「……っ、乗った!」
「靴はちゃーんと舐めて綺麗にしてくれよ? ……とまぁ、こんな感じで上手く取り入って周りを利用すりゃいいんだって」
何でも正面から突っかんじゃねーよボケが、と毒づくと、カレンはさっさとヤツらを追い払えとばかりに、アゴで男をうながした。
男が周囲に散れと目を光らせた瞬間、さざ波のように男どもの輪が引いていく。
「ちなみにこいつはこの通り顔も広きゃ腕も立つ。おまけにMっけありなもんだから、軽めの内容で上手く乗ってきてくれそうだってんで、オレらの内部リストでは常に使える男の上位にランクインされてるわけだ」
自分は汚れていると、ほんの少し前まで悔し涙に暮れていた少年と同一人物とは到底思えないしたたかさに、舌を巻く。
「褒めてんだか、けなしてんだか、わかりゃしねぇな」
当の男もまたボヤいたが、
「とか言って、しっかり喜んでんじゃねーか」
カレンがすかさず鼻で笑って毒づいた。
「さすがは女王様だ、全部お見通しかよ。どーせならその形のいい尻に敷かれて腿で思いっきり首絞められながらブッ放したら、最高に気持ちよくイケそうなんだがなぁ」
「調子に乗ってんじゃねーぞ」
「冷てぇなぁ。まぁ、そこがいいんだが」
「ってなわけで、交渉成立な」
カレンが尻に伸びてくる男の手を冷たく叩き落としながら、ふふんと得意げに鼻を鳴らし、アキラを見た。
まぁ妥当なところだろうとばかりに、アキラも異は唱えない。
すべてが大いに間違っている気がしたが、緊迫した事態が一転して収束したのは確かで、結局は自分の出る幕ではなかったのだと思い知らされた気がした。
「……シロー? 大丈夫? 遠い目になってるよ?」
いつの間に寄ってきたのか、リトに腕を引かれ、慌てて笑顔を作り、大丈夫だとオレンジの頭を撫でた。
「ったく、寝ボケてんじゃねーぞ? つーか、あの変態とさんざんヤリまくってるくせに、あんたこの手の駆け引きとなるとてんで役に立たねぇのな。そんなんであいつの相手が務まるのかよ?」
事態の収束に関し、まるで役に立たなかったのは事実だが、龍之介の恋人としての資質まで問われるのはさすがにどうなのか。
一回一回の密度は限りなく濃く、細胞が根底から造り変えられるようにさえ思えたが、実際ヤリまくっていると言われるほど身体を重ねた回数は多くはない。
離れ離れの日々の中、会いたくても会えない切なさに震え、身悶え、龍之介の肌の熱さを思い出しては耐えきれずに己を慰める自分を、嘲笑われた気がした。
どうしようもなく気分がささくれ立ち、
「龍之介が変態なのは否定しないが……」
自分たちには自分たちの形があるのだと、控え目に異を唱えようとした時だった。
「……誰がナンだって?」
毒のように甘い声がねっとりと耳朶に絡みつき、息を呑んだ。
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