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危機感 (龍之介side)
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小一時間後、約束通り、保温容器に入れられ湯気を放つ粥が供された。
匂いはいいが、薄茶色の見た目は非常によろしくない。
「……ドロドロじゃねェか」
「粥とはそういうものだ」
いいから食えと、恋人の視線が尖る。
恐る恐る口をつけると、
「旨ェ……」
自然と言葉がこぼれた。
熱いまではいかない、けれど充分な温もりを移してくれる適温に保たれた粥は、舌の上でやさしく溶けて、最後に芳醇な旨味を残していく。
歓びにも似た感覚が脳から全身へと伝わり、スプーンをすくう手の動きが止まらなくなる。
それを見た士郎が満足そうにうなずいた。
凛々しい瞳が慈愛に溶ける様に、思わず見惚れてしまう。
こういうところなんだろうな、と呆れとあきらめを含んだため息がこぼれた。
組織のような息詰まる場所で、何の見返りもなく支えようと手を伸ばされたら。
どんな屈強な男だって落ちる。
危機感に脳内でアラームが鳴り響き、込み上げる不安と、この男は自分のものだという独占欲に叫び出しそうになりながらも、身体は粥の旨さと温もりを求め、すくってはすするのをひたすらに繰り返した。
「もう少しゆっくり食べたらどうだ?」
病み上がりの身体が驚くぞと諭されても、結局は器一杯の粥をノンストップで食い尽くしてしまった。
「……もうねェのかよ?」
恨みがましげに空の皿を睨みつけたが、
「あるにはあるが、アレクから徐々に量を増やすように言われている」
また後で作ってやるから今朝はこれで終わりだと皿を取り上げられた。
自分の身体を心配してくれているのは重々承知の上だが、面白くないものは面白くない。
「……オレの望みよかアレクの指示が優先とか、おかしくね?」
ボヤけば案の定、呆れられた。
「ほんの数時間の我慢だろう。昼にはまた味付けを変えて新しい粥を作ってやるから、我慢しろ」
「オレは今この瞬間に、もっと食いてェって言ってンだ。……いいから作ったモン全部よこせ」
数時間後のことなんざ知るかと鼻を鳴らせば、子供か、とついには額を指先で思い切り弾かれた。
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