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独占欲 (龍之介side)
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「……っ、テメェ、病人相手に何しやがる……?」
「病人は病人らしく、しおらしくしてたらどうだ? ……ブツブツと文句ばかり言いくさって、いい加減、男らしくないぞ」
最初こそ病人相手だと遠慮していた士郎の視線が徐々に尖り、やがてははっきりと目が据わった。
しまった、やり過ぎたと思った時にはすでに遅かった。
「……そんな勝手なことばかり抜かすなら、今後一切おまえのために飯は作らないが、いいんだな?」
ブチ切れ寸前の静かに怒れる閻魔大王様が、目の前に鎮座ましましていた。
「……そりゃねェだろ」
勘弁してくれとボヤいたが、無駄だった。
「大人しく寝て次の粥を待つか、こりずにごねて味気ない生活を送るか。……好きな方を選べばいい」
すっかり機嫌を損ねた恋人の冷ややかな視線を前に、クソっと悪態をつく。
ムカつくにはムカつくが、不思議とどこか愉快でもあるのは、そんな怒りに燃えた視線さえ愛しく、こうして尻に敷かれるのも悪くはないと思ってしまうがゆえだ。
どうしょうもねェなと苦笑したのを了承と取ったのか、士郎の態度がいくらか軟化した。
「余った粥を医療ブースの食事可能なメンバーたちに配ってくるから、おまえは昼飯まで大人しく寝ておけよ?」
そのままこちらの了解も取らずに、出行ってしまう。
ここにいる間は離れるなと言い置いたはずが、順調に回復していると見るなりこれだ。
呆れを通り越して、もはや笑えてくる。
まったく思い通りにならない。
だから楽しいとも言えるのだが。
何だかんだ言いながらも一人の時間を確保できたのはよかったが、飯を作るたびに士郎が食堂に入り浸るのはどうにも面白くなかった。
結局は飯も、それを作る姿も、何もかもを独り占めしたいのだ。
誰にも見せたくない。
あの男に属するものすべてをこの腕の中に抱え込んで、握りつぶしてしまいたい……。
できるはずがないと己を嘲笑っても、欲は膨らむばかりで終わりが見えない。
抗生物質を山のように使ってもなお暴れ回る痛みや熱で意識が半ば朦朧としているせいもあるのだろう。
普段のように歯止めが効かなくて参る。
暴走する独占欲で、いつか士郎を灼き尽くしてしまうのではないかと怖くなり、己の身体をキツく抱きしめ、震える吐息をそっと噛み殺した。
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