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認めるしかない (士郎side)
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「……っ、く……っ」
気づけばブルリと身体を震わせて、放っていた。
組み敷いた龍之介の腹や胸、頬や黒髪までもが白濁に染まり、ブワッと消え入りたいほどの羞恥に襲われた。
「……しかたねェなァ」
やれやれと眉を上げた龍之介に、
「すまない……っ」
慌ててつかんだシーツで拭おうとすれば、もったいねェことすンなと止められた。
「ちょうど喉が乾いてたンだ」
と、綺麗に指先でかき集めては舐めるのを繰り返す。
実に淫らに、そして美味そうに己の指先を舐めしゃぶる姿に、思わず止めるのも忘れて見入ってしまう。
気づいた時には満足気な龍之介がゴクリと喉を鳴らした後だった。
「おまえは……っ」
いったいどこまで自分をかき乱したら済むのだと、頭を抱えた。
「コトバだけでイッちまうオマエは、最高に淫らでかわいかったぜ?」
「……っ、言葉だけならこんな風には……」
言いながら、青くなる。
「へェ? ならオマエは、いってェ何にそンなに煽られた?」
案の定、あげ足を取られた。
わかっているくせに聞くなと睨んでみても、容赦などしてもらえるはずもなく。
「……っ、おまえの……その声が悪いんだ……っ」
思わず恨みがまし気になる自分が情けなかったが、どうしようもない。
誰もが口をそろえて、龍之介の声の淫らさを語った。
耳にしただけで濡れる、毒のように甘い声。
語尾が甘く切なくかすれ、長い余韻を引く。
龍之介だとわからないよう、大幅に声音を変えて使用したアキラのプロモーションビデオの音源は、あのミステリアスな美形は誰だとその映像美が世間を騒然とさせたのと同時に、その滴るような甘い声にもずいぶんと注目が集まったものだ。
スピーカー越しでさえ一瞬で人の心をつかんでしまうのだから、実際耳にしたらもはやひとたまりもない。
意識しているのかいないのか、常にかすかな吐息が入り混じる。
嘲笑めいた響きに、ゾクリと己の中に隠れている被虐心を煽られた。
その声でおまえは特別だなどとささやかれた日には、達しない方がどうかしている。
いっそ自分は正常だと、世に向けて釈明したいような気分だった。
「……ンとに、オマエはこの声が好きだよなァ」
「……っ」
この声がなかったら、堕ちてきたかどうかと肩をすくめられ、知るかと半ば自棄になりながら吐き捨てた。
堕ちた今なら龍之介から何が失われたようと、まるで揺らがない自信があったが。
堕ちた理由の重要な部分を悪魔のように魅惑的なこの声が占めていたのではないかと言われれば、そんな気もした。
いくら孤独に触れ、自分にしか満たせない空白があると感じても。
性的な意味で惹かれなければ、心も身体もここまで溶けたりはしない。
……認めるしかなかった。
初めて触れ合ったあの瞬間から、もっと言えば克己を通して嫌々関わっていた頃から。
危ぶみ遠ざけるほどに、この男は魅惑的だったと。
自分も他と同じだ。
魅せられ、惹かれ、なす術もなく堕ちてゆく……。
そう考えれば逆に唯一の相手として選んでもらえたことそのものが、奇跡に思えた。
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