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極秘エリア(龍之介side)
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夕食後、ユーリにちょっと来いとうながされ、極少数の幹部しか入れないという極秘エリアに導かれた。
前回長老の部屋に案内されたのとはまた別のエリアだ。
セキュリティーをカードと瞳の虹彩、手の平全体の指紋認証でくぐり抜けた廊下の先は、見たところ行き止まりになっていた。
「17歩目だ。よく覚えとけよ」
何もない場所で立ち止まり、右側の壁を向く。
隠し扉か。
ユーリがランダムな石造り状の壁に慣れた仕草で特殊な手のかざし方をすると、次々と石が組み変わり、やがては淡く輝くドアが浮かび上がった。
一歩前に進むと、ドアが綺麗に左右に割れていく。
「おまえのセキュリティーランクはブラック。つまり、最高位だ。この施設のどこにでも自由にアクセスできる」
「……そりゃ、どーも」
「感動薄いなぁ」
気の抜けた返事に、苦笑された。
「なにせ、ムリくり押しつけられたリーダーって立場が重くてよ」
「そう責めんなよ」
ゆうに一回り以上は年下のガキ相手に下手に出るのにも、ためらいがない。
こういう男はやっかいだ。
最終的には味方で間違いないのだろうが、油断をすれば手の平の上で踊らされ、思うままに扱われかねない危機感が募る。
ジンの瀕死の重症に気を取られ、自身の身体も限界だったこともあり、当初は組織内部の混乱や苛立ちを沈静化させるので精一杯だったが、落ち着いて考えてみれば、あの敵襲への対応からして妙だった。
その答えは長老との対面の際に一応はもらっていたが、まだ何かある。
隠された何かが。
この男はヘラヘラしているが、けして無能ではない。
その証拠に、先程から自分と会話するのと同時に、多方面から入るありとあらゆる問い合わせにスラスラと淀みなく答えているばかりか、瞬時に判断し指示出しまでしている。
男の脳の構造上、こうしたマルチタスクが可能な者はそう多くはない。
内容も聞いている限りでは多岐に渡り、かなり高度な専門知識を必要とするものばかりだった。
これほど有能な男が内紛を放置した理由が、単にキリヒトの望むようにさせたかっただけとは考え難い。
いくら長年の功績に敬意を表し報われないジンへの恋心に同情したとは言え、到底納得のいく答えではなかった。
自分のような新参者には話せない内容もあるのだろう。
子供のようにすべてを洗いざらい吐けと、ごねるつもりもない。
面倒な問題にはあまり関わりたくないのも本音だった。
ただでさえ問題は山積みなのだ。
リーダーにはリーダーの役割というものがある。
組織のナンバーツーが裏で解決できる問題は、勝手にやってくれればいいとは思いつつ、あまりナメられるのもゴメンなので、適度に釘は刺しておく。
「そういや、殺りそこねたキリヒトの仲間で回収できたヤツいンだろ? 何か吐いてンのかよ?」
「いや、うまいこと隙をついて逃られた」
「……へェ? ここのセキュリティーも案外ザルだな」
ハルトは天才だ。
そのハルトをして難解だと言わしめたアルゴリズムを、麻酔弾で朦朧とした状態の敵が、解いて逃げる?
……ありえない。
「あん時ゃ混乱して、セキュリティーが一時的に穴だらけになっててよ。あの後、バグは修正しといた」
「……ならいい」
茶番だ。
互いに、上っ面を舐めた会話だと、わかっている。
食えないおっさんだ。
今後のことを考えれば、一度やり合ってみた方がいいのかもしれないと、試しに殺気をぶつけてみれば、ピクリと前を行く肩が震えた。
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